『理念と経営』WEB記事

苦境のなかでも必死に行動すれば活路は拓ける

株式会社大寅 代表取締役 大野創世 氏

観光バス事業を経営する同社はコロナ禍でダメージを受けた最たる例だ。売り上げゼロ、運転手たちも解雇しなければならない……そのような状況のなか起死回生の一手となったのは、事業再構築と大野社長の行動力だった。

コロナ禍で観光バスの売り上げはゼロに……

コロナ禍以前、インバウンド需要は年々増加し続け、2018年時点での訪日外国人旅行者数は3000万人を突破していた。この波に乗って成長していたのが、観光バス事業を行っていた株式会社大寅だった。

中国の青島から日本に留学してきた大野社長は、卒業後も日本に残り、同級生とともに観光バス事業を立ち上げ、その後独立。訪日外国人旅行者数を大幅に増加させる目標を掲げていた日本政府の方針もあり、観光業は活気を帯びていて、大寅の経営もきわめて順調だった。中国や東南アジアやオーストラリアからの観光客を観光バスに乗せ、大阪や京都や岐阜などの観光地を巡った。

ところが2020年1月、潮目は突然変わった。新型コロナウイルスが国内で確認されたのだ。観光業は大打撃を受け、売り上げはほぼゼロに。2月まではオーストラリアの需要が多少残っていたが3月にはロックダウンによって売り上げは完全になくなった。

「5月には倒産するのではないかという思いがよぎる一方で、SARSのように短期間で収束するのではないかと楽観的な気持ちもありました」

東京五輪も近づき、春の行楽シーズンの準備のためにも、1月時点で大型バスを1台追加購入した。
ところが、もくろみは外れた。コロナ禍は収まるどころか出口が見えない状況になった。バスのほとんどを手放し、多いときは20人を抱えていた運転手の大半を涙を呑んで解雇せざるを得なかった。



同社の観光バス事業における2019年の月間売上高は5000万円を超えていたが、コロナ禍で一気にゼロになったという

取材・文 長野修
写真提供:株式会社大寅


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本記事は、月刊『理念と経営』2022年6月号「特集2」から抜粋したものです。

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