『理念と経営』WEB記事

事業は時代に合わせて変化しなければならない

株式会社ゲイト代表取締役 五月女圭一 氏

居酒屋と漁業を掛け合わせたビジネスモデルを展開していた同社。コロナ禍で全店舗の閉鎖を決断したが、漁業に振り切ったことで新たなビジネスが生まれているという。さまざまな事業転換を成し遂げてきた五月女社長の挑戦――。

東日本大震災を機に漁業を軸とした事業へ

株式会社ゲイトは、これまで、ビル賃貸業、居酒屋経営、定置網漁業、猫用ペットフードの製造販売業など、さまざまな事業を展開してきた。一見脈絡のない事業内容に見えるが、そこには社会環境の変化に対応する柔軟さと、社会問題を解決しようとする五月女社長の高い志という二つの軸があった。

「事業転換には抵抗がありません。むしろ、変わらないと死んでしまいます」

そう言い切る五月女社長の考え方の背景には、生まれ育った東京都墨田区という地域の影響が大きい。町工場をはじめ自営業の家庭が多く、時代の変化に合わせて柔軟に事業転換してきた地域なのだ。五月女社長の家庭も同様だった。プラスチック加工の工場を経営していた先代である父は、100円ショップの登場を受けて「勝負にならない」と判断し、工場を畳みビルを建て、ビル賃貸業へと転身した。

五月女社長も大学時代からすでに学習塾を経営しており、24歳のときには行き詰まっていた父のビル賃貸業を立て直した。一度、会社員を経験したが、その後、居酒屋のフランチャイズ経営を開始。10店舗を展開するまでに成長したところで、本部から独立。自分たちで仕入れをするようになってから、流通の仕組みに疑問を感じた。

「仕様書がないので、食材の生産地すらよくわからないのです。既存の大量生産大量消費の流通の仕組みのなかでは、食の安全を求めることは困難だと気づきました」

その頃、東日本大震災が起きた。生産地や物流が打撃を受け問屋からの仕入れ値は10~15%も上昇。逆に品質は下がった。

「これをきっかけに、既存の流通から離れようと決めました」

そのときに目の当たりにしたのが日本の漁業の実態だった。知り合いを通じて知った三重県熊野の漁業を視察してみると、高齢化が進み後継者がいない。しかも、新鮮な魚はただ同然の値段で買い叩かれている。

この現状を何とかしたいと考えて決めたのが、漁業への参入だった。定置網漁で獲れた天然の魚を現地で加工し、すぐさま搬送して自社の居酒屋で提供する。魚の種類はおまかせの「生産地ファーストコース」。お客様にとっては、普段目にすることの少ない珍しい新鮮な魚をたくさん食べることができるし、メニューは「おまかせ」なので廃棄する量も激減した。



東京・新橋のオフィス街を中心に、同社が運営していた居酒屋チェーン「くろきん」「かざくら」。旬の食材を活かした「生産地ファーストコース」は5000円(税込み)と手ごろな価格で提供されていた

取材・文 長野修
写真提供:株式会社ゲイト


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本記事は、月刊『理念と経営』2022年6月号「特集2」から抜粋したものです。

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