『理念と経営』WEB記事

世界の企業はコロナとどう闘っているか?

芝浦工業大学教授 原田曜平 氏

長引くコロナ禍の中で、新しいビジネスが次々に産声を上げている。海外の企業はどんな努力や工夫をしているのか? そして、そこから私たちが学ぶべきこととは――。昨年、共著書『アフターコロナのニュービジネス大全』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を上梓した原田曜平氏に聞いた。

――コロナ禍以降の日本企業の状況をどうご覧になっていますか。

原田 飲食業界はじめ、日本でも苦しんだ業界があるのを百も承知で言わせていただくんですが、世界的に見ると実は倒産などが少なくて済んだ国だったわけです。

もともと日本人は安定志向で、現状維持を望みます。それはいい面もありますが、一方でスクラップ&ビルドのようなイノベーションが起こりにくい国でもある。コロナ禍の影響がそれほどでもなかったこともあり、空気は新しいことを受け入れよう、というより、コロナ前に戻ろう、ですよね。それまで我慢しよう、と。感染拡大が少しでも収まると、その勢いがまた強くなっていく。

―そんな中で、世界15カ国の先進事例を紹介した共著書『アフターコロナのニュービジネス大全』がベストセラーになっています。

原田 「いつか元に戻るから、それまでの我慢」という発想から抜け出すために有効な方法の1つが、海外の事例を知ることなんです。その真似をすることが、変革期のイノベーションにつながる。ところが日本では、言語の壁もあるのだと思いますが、海外の情報が極めて少ない。インターネットには出ていないような情報を、自社で取りに行こうという会社も多くない。

実は日本以上にコロナ禍の打撃を受けた国もありますから、いろいろな工夫や努力が行われていたんです。でも、そういう情報も入ってこない。そうすると、真似をする先が日本国内だけになってしまう。これは問題でしょう。実際には海外で本当にいろんなことが起きていて、これでは日本企業もまずいぞ、と思ってほしかったし、真似してほしかったんです。

共著者の小祝誉士夫さんは、海外の若者研究を一緒にやってきた15年来のパートナーですが、現地の人に嫁いだ日本人妻のネットワークを持っています。そうした人たちに、コロナ後のニュービジネスについて調べてもらったところ、面白い事例がたくさん集まった。それで本にしよう、ということになったんです。

単にビジネスの内容を紹介するだけでなく、分析した上で、日本でどうビジネスに応用できるか、まで踏み込んだコラムもつけました。中小企業にこそ需要があると最初から思っていたからです。

デジタル化で光るアナログの良さ

――世界の企業はコロナ禍とどう闘っているのか、原田さんがこれは特筆に値するな、と感じた事例を教えてください。

原田 1つのヒントとしては、これは後に世界に広がるんですが、北欧で始まった各家庭で窓際にクマのぬいぐるみを置く、という取り組みは印象に残っていますね。外で遊べなくて家の中で退屈に過ごしている子どもたちがたくさんいたわけですが、ちょっとした散歩のときに各家庭の窓際でクマを見つけられて、小さな楽しみを得ることができた。コロナ禍といえばデジタル化が叫ばれた中で盲点でした。

取材・文 上阪 徹
写真提供 本人


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本記事は、月刊『理念と経営』2022年6月号「インタビュー」から抜粋したものです。

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