『理念と経営』WEB記事

現場の声をしっかり聴き、会社の考えを丁寧に伝える

株式会社ドムドムフードサービス 代表取締役社長 藤﨑 忍 氏

1990年代、全国に400近くの店舗を展開したハンバーガーチェーンのドムドムハンバーガーは、親会社の不振もあり30数店舗にまで激減した。しかし、今、再び業績を回復させつつある。その立役者が藤﨑忍社長だ。

社内の意思疎通に大きな問題があった

商品開発担当として株式会社ドムドムフードサービスに入社し、わずか9カ月で社長に就任した藤﨑社長が、最初に目の当たりにしたのが社内の意思疎通の課題だった。例えば、会議の席上でやりとりされるのは数字ばかりで、参加者の意見交換がない。話をするのは取締役だけで、参加者はその話を拝聴するだけ。

「数字的なものは配布された資料を見ればわかる話です。必要なのは、参加者がそれぞれの意見や考えをぶつけ合うこと。建設的な会話がない限り、企業再生は進まないと思いました」

藤﨑社長がまず取り組んだのは、社員との信頼関係の構築だった。

「私が入社してきて一年もたたずに社長になったので、みんな不安だったと思います。まずは私自身のことをみんなに知ってもらうために、全国の店舗を回ることにしました」

北は岩手・山形から南は福岡まで、週に4、5日、店舗を回って、スタッフに声がけし、彼らの意見に耳を傾けた。会えなかったスタッフのために手紙を書き「何かあったら連絡してね」とLINEのID・電話番号を記載して現場に残して回った。

「心がけたことは二つです。一つはお客様と直接接している現場の意見や声をしっかり聴くこと。もう一つは、本社からの方針や考えを現場に優しく丁寧に伝えることです」

現場が抱える問題について聴くときには、一方的なジャッジをしないように配慮した。特に人間関係的な問題については、片方だけの話を鵜呑みにしてしまうと失敗することがある。そのため、いったん本社に持ち帰って複数の話や情報を基に判断するようにした。

こうした地道な取り組みを続けるなかで、社内や店舗の雰囲気が変わっていった。社内には笑いが起きるようになり、何でも話せる雰囲気が生まれてきた。そうすると、現場の課題や要望が本社にスムーズに届くようになり、それが素早い改善へとつながった。そうした積み重ねのなかで、風通しのよい組織へと変貌していった。

「お客様のことを一番よく知っているのは現場です。現場の声に耳を傾けなければ、改善も適切な商品開発もできません。時代はイノベーションを求めています。上だけがアイデアをひねっても斬新なものは生まれません。みんなが何でも言い合える空気のなかから、おもしろいアイデアが生まれて、イノベーションへとつながっていくのだと思います」

威圧的な態度は自分の耳を塞ぐことになる

風通しの悪い会社に共通することの一つとして、上司が部下に対して威圧的な態度をとることが挙げられる。「言い訳を言うな」「黙ってさっさとやれ」。これでは、イノベーションの生まれる余地などない。

「会社にとって一番大事なことは、社員みんなが幸せになること。話も聞いてもらえない雰囲気では、心の満足度は上がらないし、幸せを感じることもできません。また、上司にとってもそれは自分の耳を塞ぐこととなり、ビジネスチャンスを逃すことになります」

取材・文 長野 修
撮影 編集部


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本記事は、月刊『理念と経営』2022年4月号「特集2」から抜粋したものです。

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