『理念と経営』WEB記事

社員との価値観共有が適切な評価につながる

株式会社SmartHR[スマートエイチアール] 執行役員 / VP of Human Resource(人事責任者) 薮田 孝仁 氏

未上場企業にもかかわらず、昨年の推定評価額が約1700億円と急成長を続けている同社。その裏側には、企業と社員の価値観を合わせ戦略に沿った行動をするための徹底した「人事評価の仕組み」があった――。

「7つのバリュー」に即した行動で評価する

2013(平成25)年に設立されたSmartHRは、人事・労務管理のクラウドサービスを展開する企業だ。現在の社員数は約550名。この10年で力強い成長を続けてきたITベンチャーの一つだ。

同社の人事評価の特徴で興味深いのは、会社と社員の「価値観のマッチング」の程度を、実際の評価制度に組み込んでいることである。個々の社員が期初に立てた目標の達成度などの成果だけではなく、会社が設定する「7つのバリュー」に即した行動をとっているかどうかが、点数として合算される仕組みだ。

同社の執行役員で人事責任者の薮田孝仁さんが解説する。

「評価会議では『7つのバリュー』に対して、『周囲の模範』『体現できている』『体現でき始めている』『体現できていない』『これはNGにあたる』と5つの指標を用意しています。面談では自分で自己評価をまずは書き、それを評価者が見ていきます。そのなかで、社員と評価者の認識にギャップがあれば、『ここは少し甘いよね』『ここは自分に厳しすぎる』とアドバイスをしていくことになります」

このとき重要なのは、この自己評価の「ズレ」をいかに修正していけるかだ、と薮田さんは続ける。例えば、同社の「7つのバリュー」の一つに、「自律駆動」という言葉がある。目の前の課題に対して、いかに自分で考え、自ら判断を下せているかという指標だ。

だが、価値観も仕事も異なる個々の社員からすれば、「自分のどのような行動が自律駆動として評価されるのか」が曖昧であっては行動に迷う瞬間もあるだろう。

「そこで、弊社では『7つのバリュー』のそれぞれについて、職種ごとに『グッドな行動』『NGである行動』を書いたテキストを作って社員に共有しているんです」

例えば、「人が欲しいと思うものを作ろう」という「バリュー」。そのための行動の評価基準としては、「課題を発見、検証し、解決策を考えて実行する」「ユーザーに会いに行く」といった事例が具体的に示されている。

あるいは、「認識のズレを自ら埋めよう」というバリューであれば、そのNG事例として挙げられるのは「結論だけしか話さず、背景や意図を共有しない」「伝えただけで理解していると思い込む」――。社員はこのテキストを確認することで、自らの行動が評価基準に即したものであるかを、迷った際に参考にできるわけだ。

取材・文 稲泉連
写真提供 株式会社SmartHR


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本記事は、月刊『理念と経営』2022年3月号「特集2」から抜粋したものです。

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