『理念と経営』WEB記事

先進技術を駆使し、地域の新価値を創る

株式会社INDETAIL 代表取締役 坪井大輔 氏

地方の高齢化・過疎化は日本だけでなく、今や世界の先進国が抱える共通の課題である。その解決のため、先進テクノロジーを地域と掛け合わせ、新しい価値を生み出している企業がある。『Upgrade the World!』をビジョンに、地方の課題解決に挑むローカルベンチャーの闘い方。

過疎地域の経済を回す「ISOU PROJECT」

 日本が抱える課題の一つが、「ヒト・モノ・金」が首都に集まる東京一極集中だ。それによって地方は活力を失い、地域格差が進む。

 そうした状況から生まれる地域のさまざまな課題を、新規事業の創出によって解決しようとする企業がある。それが、北海道に本社を置く株式会社INDETAILだ。その手法は非常に斬新で、既成概念にとらわれないアイデアを、ブロックチェーンをはじめとする先進テクノロジーを駆使しながら実現し、新たなビジネスモデルを数多く創出してきた。

 いくつか事例を紹介しよう。たとえば、地域創生の事例として2019年に北海道の厚沢部町で行った実証実験「ISOU PROJECT」だ。

 厚沢部町の人口は3600人。タクシーは町に1台、ガソリンスタンドも1つ。バスは1時間に1本程度。この現状で、どうすれば経済を活性化できるのか。坪井大輔社長が考えた結論はこうだ。

「まず、住民が動かなければ経済は回りません。そのためには動く手段の確保が必要です。さらに、お金が町の外に流出せずに町の中で動くことが大切です」

 これを実現したのが、「移送コイン」の導入だった。住民は、スーパーや役場や病院など町内の施設を利用することで、専用ICカードか専用アプリで地域通貨である移送コインを獲得する。何も購入しなくても施設に行けばもらえるが、これは移送サービスのみに利用が制限されている。運賃はEVバス乗車の際にICカードかアプリに貯まった移送コインで支払う。大事なことは、バスをオンデマンドで乗車したい場所まで呼び出せること。その際の呼び出しは、アプリに加え電話による自動音声システムからも可能としたので、専用アプリが使えなくても大丈夫。なお、EVバスの電力は、厚沢部町内の太陽光発電などで自家発電した電気を使う。


「過疎地域は、イベントなどで外から人を呼ぼうとしますが、多くの場合、その場限りで終わってしまいます。また、町の外まで買い物に行けばお金が外に流出します。いかに町の中で移動してお金を動かすか。それを意識する仕組みを作ったわけです。しかも、電力は地産地消です」

 この実験後、調査会社に依頼して経済効果を算出してみると、約3600人の町にもかかわらず年間1億5000万円にものぼったという。

取材・文/長野修
写真提供/株式会社INDETAIL


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本記事は、月刊『理念と経営』2022年1月号「特集1」から抜粋したものです。

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