『理念と経営』WEB記事

存続できるか、否か。 奔走のなかで芽生えた “思い出屋”としての誇り

サントピアワールド株式会社 園長 髙橋 修 氏

新型コロナウイルスの流行という予想外の事態に陥っても、ゼッタイに諦めない――。なんとか突破口を見いだそうと試行錯誤の日々が続き、そうして掴んだ新たなチャンス。

「8月末には、資金がショートする」

 新型コロナウイルスの流行が始まって最初に打撃を被ったのは、人が集まる施設だ。新潟県阿賀野市で四半世紀近く営業を続けている老舗遊園地のサントピアワールドも例外ではなかった。2020(令和2)年3月の売り上げが、いきなり前年の3割にまで落ち込んだのだ。さらに、政府の緊急事態宣言発出で4月は休園を余儀なくされる。だが、園長の髙橋修氏は、このときにはまだ余裕があったという。

「GWで年間利益の半分を稼ぐという業態なので、十分そこで取り返せると思っていました。ところが、季節が進んでもコロナ禍は収束しそうにありません。もし5月から先も開園できなかったら、8月末には資金ショートが発生する。日頃は悲観的な私も、さすがにこのときはゾッとしました。そして心配は現実に。緊急事態宣言にGWが含まれることになりました」

 実は、サントピアワールドは11(平成23)年に倒産し、翌年民事再生法の適用を受けている。その後、新園長となった髙橋氏が、徹底したコスト削減などで8年かけてようやく黒字化を達成したものの、まだ債務が残っていたため、金融機関からの融資はほとんど期待できない状況だったのだ。髙橋氏は最後の手段として、クラウドファンディングに望みを託した。

「仕組みくらいは知っていましたが、やり方がわかりません。そこで、経験者を探して話を聞き、クラウドファンディング大手『CAMPFIRE』のサイトを教えてもらって、すぐに申し込みました」

 ホッとしたのも束の間、実はここからがたいへんだった。ホームページを作成してアピールするなど、さまざまな手を施さないとお金は集まらないことがわかったのだ。そうなるとひとりでは到底手に負えない。髙橋氏が知人に助けを求めると、そこから地元の遊園地のためならと応援の輪が広がり、ほどなく大学2年生から64歳までの9人から成るプロジェクトが発足した。

「『目標は5000万円』と言うと、誰もがそんな額は無理という顔で私を見ます。でも、園の存続のためにはそれ以下では意味がないのです。そう説明し、なんとか全員に納得してもらいました」

窮余の策で考え出した
「ぎりぎりアトラクション!」

 事業者がクラウドファンディングをやるというのは、資金繰りが苦しいといっているのと同じことだから、金融機関や取引先が警戒して離れていく恐れもある。そういう意味では諸刃の剣だ。しかも、集めようという金額はあまりに巨額。それでも髙橋氏に悲壮感はなかった。窮地を知って駆けつけた多くの市民が彼を元気づけてくれたのだ。

「あるとき、園を訪れた70代半ばのご夫婦が、お金の入ったのし袋を置いていかれました。そこには応援団とだけ書かれていて名前がないのです。持参した貯金箱を目の前で割って中の小銭を全額寄付してくれた若者もいます。そんなエピソードを話せといわれたら、それこそ枚挙に暇がありません。ここは多くの人たちの思い出の詰まった場所なのだということを、私は彼らにあらためて教えてもらった気がしました」

取材・文 山口雅之
写真提供 サントピアワールド株式会社


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本記事は、月刊『理念と経営』2022年1月号「それでも負けない! 中小企業の底力」から抜粋したものです。

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