『理念と経営』WEB記事

“卵の殻”を用いて、SDGsの意識を高める

株式会社SAMURAI TRADING 代表取締役 櫻井裕也 氏

2020年7月から全国の小売店でレジ袋の有料化が義務づけられ、脱プラスチックを意識する機会も増えた。こうした環境課題解決にいち早く取り組んでいたのが、同社の櫻井社長である。産業廃棄物をエコロジカルなものへと変化させた方法に迫る。

「PLASHELL」でつくられた輪島塗の器。日本の伝統文化を絶やさないために、今後さまざまな職人とコラボレーションを果たしたいと櫻井社長は語る。

循環型リサイクルで脱プラスチックに貢献

 レジ袋の有料化など、日本でも脱プラスチックの流れが強まっている。その背景には、海中に流出すると半永久的に残ってしまうプラスチックの特性がある。海洋放出されたものは、波や紫外線にさらされてマイクロチップとなり、それを食べた魚の体内には汚染物質が蓄積し、それが人間にも影響する。

 こうした環境問題の解決に一役買う取り組みを行っているのが株式会社SAMURAI TRADINGだ。産業廃棄物として捨てていた卵の殻をプラスチックに混ぜ込むことで、プラスチックの使用量を大幅に減らすことに成功したのだ。

 代表取締役の櫻井裕也さんはもともと株式会社さくらフーズという、デザートの製造・販売を行う食品会社を経営していた。そこで発生する大量の卵の殻を、以前は有料で産廃業者に処理してもらっていた。

 こうした産業構造に疑問を持っていた櫻井社長は、取引のあった大手外食企業の社長に相談し、そこの自社農場に卵の殻を無償で提供することにした。

「卵の殻を混ぜた土で野菜を育て、その野菜をその会社の店舗で提供する。双方にとって、お金もかからないし、無駄にもなりません。これが、その後の私の循環型リサイクルの取り組みのスタートでした」

 その後、流通業界の視察のためにアメリカを訪問した折、スーパーマーケットの食品売り場のトレーのほとんどがプラスチックから紙に置き換わっていることに衝撃を受け、本格的に脱プラスチックの取り組みを開始。

「ただ、それによって利益を出そうとか、ビジネスの柱にしようなどとは考えておりませんでした。あくまでも社会貢献という意識が強かったと思います」

 櫻井社長が開始したのは、プラスチックに卵の殻を混ぜて作る〝バイオマスプラスチック〟の開発だった。それによってプラスチックの削減に寄与できる。2015年のことだった。

 しかし、開発は簡単ではなかった。プラスチックと粉砕した卵の殻が均等に混ざらないために、製品にまだら模様ができ、見た目が悪くなるのだ。

 苦労をしたが、三年かけて満足のいく製品を開発。それが「PLASHELL(プラシェル)」だ。卵の殻の含有率は、現在60%。見た目は通常のプラスチックと何も変わらない。落としても割れない。卵の成分が増えれば耐熱性が増すので電子レンジにもかけられる。現在、食器やクリアファイルなど多くの商品に使用されている。

 そして、その後さらに、卵の殻を10~50%含むエコペーパー「CaMISHELL(カミシェル)」の開発にも成功。見た目も触った感触も普通の紙と変わらない。違うのは、使用するパルプ量が少なくなったこと。森林資源の保護や、CO2削減にも貢献する。

取材・文/長野修
撮影/編集部


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本記事は、月刊『理念と経営』2022年1月号「特集1」から抜粋したものです。

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