『理念と経営』WEB記事

定年を迎えた高齢者に働く場と生きがいを

株式会社高齢社 代表取締役 村関不三夫 氏

日本で最も深刻な社会課題・少子高齢化。いかに優秀な若手社員に長く働いてもらうかが多くの企業の問題意識となっている中、同社ではこの課題を逆手に取ったユニークな事業を行っている。シニア層が社会で活躍するための働き方や労働観について伺った。

平均年齢・71歳のシニア人材派遣会社

 少子高齢化は、日本が抱える重大な社会課題だ。日本の総人口は2010(平成22)年をピークに減少の一途をたどっていて、このままのペースでいくと、2060年には高齢者一人を現役世代約一人で支えることになり、社会保障制度への深刻な影響が懸念される。また、労働力不足、国内市場の縮小など、日本経済への悪影響も懸念される。

 こうした課題解決の一助となる取り組みをしている企業がある。株式会社高齢社だ。社名からも想像できるように、シニアに特化した人材派遣会社である。定年を迎えても気力・体力・知力のある方々に働く場と生きがいを提供している。設立時の2000(同12)年の売り上げは2300万円だったが現在は7億円と、業績は右肩上がりだ。

 登録社員数の平均年齢は71歳。年齢制限はない。業務内容は、6割が東京ガス関連の仕事だ。ガス器具の作動検査や事務作業や倉庫管理など、その業務内容は多岐にわたる。そして残り4割が東京ガス以外の業務となる。営業業務補助やレンタカー受付、マンション管理、車両移送など、さまざまな仕事がある。

 創業者の上田研二氏が会社を設立した理由は、ある課題を抱えていたからだ。東京ガスの元社員である上田氏は、当時、東京ガスの子会社の社長として奮闘していたが、業務のひとつである“新築マンション入居前のガス器具説明”業務が、土日に突然入ってくることが多かったのだ。その都度、社員が振替休日を使って土日出社し対応していたが、社員への負担があまりにも大きかった。この問題を解決したいと思いついたのが、東京ガス元社員の存在だった。上田氏が彼らに声をかけてみると、驚くほどみな快諾してくれた。

 現社長の村関不三夫氏はこう言う。
「定年退職した先輩たちは暇を持て余していたわけです。経験豊富で、気力も体力もあるのにそれを活用しないのはもったいない。生活に困っているわけではないのですが、今日行くところがない、今日やるべきことがないというのは苦痛なんです。仕事がある、やるべきことがあるというのは、生きがいです。働きたい人と、その経験を必要とする会社を結びつけるために、当社は設立されました」


取材・文/長野修
写真提供/株式会社高齢社


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本記事は、月刊『理念と経営』2022年1月号「特集1」から抜粋したものです。

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