『理念と経営』WEB記事

自動車用電球で培った技術を生かして「幻のきのこ」を量産化

株式会社大井川電機製作所 代表取締役 中河満 氏
(車両用電球製造、静岡県島田市、従業員数約130名)

いずれLEDに取って代わられる

創業以来半世紀以上、ウインカーやテールランプなど自動車用電球のメーカーとして歩んできた大井川電機製作所が、昨年夏頃からメディアで注目を浴びている。「電球メーカーが“幻のきのこ”栽培に挑戦」という話題で、地元紙や全国紙、テレビでも取り上げられた。

“幻のきのこ”とは、標高1000m以上の高山で生育し、採取が困難なこともあり市場に出回ることがほとんどないハナビラタケのこと。白い花びらのような見た目とコリコリとした食感、ほのかな松の香りが特徴だ。

中河社長はハナビラタケを事業多角化の一環ではなく、電球に次ぐ事業の第二の柱に育てていきたいと考えているという。

なぜ、電球一筋の同社が生産ノウハウの確立していない農産物の人工栽培に取り組み、さらには量産化にまで至ることができたのだろうか。

「新事業を始める必要性は20年以上前から感じていました」と中河社長。当時、LEDはまだ用途が限定されている段階だったが、いずれは現在生産している電球がLED電球に取って代わられる時代が来ることを予期していたという。

新事業を模索した同社が最初に手がけたのは、まったく違う分野の製品ではなく、新しい機能を持たせた電球や小型の紫外線ランプなどだった。

「それまで世の中になかったような商品を数種類送り出したんですが、残念ながら市場性が低く、需要が広がることはありませんでした」

技術力のある中小企業が新事業として従来から培ってきた技術を基に商品開発を行うケースは少なくないが、従来の電球事業の延長線上の発想から生まれた商品では活路は拓けなかったのだ。

ものづくりの基本は農産物でも変わらない

電球からの派生商品は結果を出せなかったものの、新事業は自社が培ってきた「広い意味での技術力」を活用できるものであるべきという思いは変わらなかった。そこで2015(平成27)年に始めたのが、ハナビラタケの人工栽培の研究だ。シイタケなど一般的なきのこ類に比べ、菌に弱いハナビラタケは温度管理などが難しいため、参入障壁が高いが、同社が電球で培ってきた管理技術を生かせば、実現は不可能ではない。

プロジェクトには専従スタッフに加えて各部門の代表者も参加する体制にし、「全社的な事業」として意識統一を図った。

写真提供 株式会社大井川電機製作所
取材・文 宮澤裕司



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本記事は、月刊『理念と経営』2021年11月号「それでも負けない! 中小企業の底力~自動車部品メーカー編~」から抜粋したものです。

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