『理念と経営』WEB記事

実践! 個人と組織を成長させるリフレクション

昭和女子大学キャリアカレッジ 学院長
一般社団法人21世紀学び研究所 代表理事
熊平美香 氏

不確実な時代を生き抜くには、自分自身を振り返ることが大切です。リフレクション(内省)は、まさに自分の内面を客観的、批判的に振り返る行為。第一人者である熊平美香さんに、実践方法を伺いました。さあ、ペンとノートを持って始めてみましょう。

答えのない時代になった

―熊平先生は長年、組織開発や教育の分野で活動されてきましたが、最近はリフレクション(内省)のメソッドを広く伝えていらっしゃいます。なぜ今、リフレクションが注目されているのでしょうか。

熊平 前例が通用しない時代になってきたからではないでしょうか。日本は比較的コピー&ペーストが得意な国民性です。例えば高度経済成長期は車や家電製品をはじめ、「外」から取り入れたものを「改善」し、素晴らしい商品を送り出して経済成長しました。しかし、グローバル化した現在は、そうした「外」に答えを求める時代ではなくなっています。となれば、「内」から答えを見つけなければなりません。つまり、かつての成功体験をいったん手放す勇気が必要で、そのためにリフレクションが有効だと思います。

私はバブル崩壊後、アメリカでリフレクションの方法論を学び、衝撃を受けました。「自分たちはなぜ強かったのか」という自己分析から「弱くなったところ」をあぶりだし、前進するための材料にする。これはぜひ、日本でも広めたいと思いました。

成功体験を手放すには自分やチームを客観視し、メタ認知(認知していることを認知)することから始めます。ですが、過去を否定せよ、というわけでは決してありません。あくまでも「振り返り⇒learn」が大切なのです。learnは前進とクリエイトあるいはイノベーションがセットになってこそ、意味があるもの。振り返れば、それまで気づかなかった「ものの見方」を発見でき、多面的な「ものの見方」ができるようになって、必ずイノベーションのヒントになります。リフレクションがうまくできるようになれば自然と、より有効なデザインシンキングする力も身についていきます。

認知の4点セットがベースになる

―具体的には何から始めればよいでしょうか。

熊平 「意見・経験・感情・価値観」を切り分け、可視化します。これは「認知の4点セット」というフレームワーク(図1)でリフレクションのベースです。知覚や判断は過去の経験から形成された「ものの見方」によって決まりますから、「ものの見方」がどう形成されたかを客観視するためです。


日常的には意見の背景にある経験・感情・価値観を一つひとつ切り分けずに私たちは生活しています。でも、やってみると思いがけないことに縛られている自分に気づいたり、チームメンバー間でも同じ出来事に全く違う認知があったりして、チームや自己理解に大変役立ちます。ただ、意見・経験は比較的可視化、言語化しやすいですが、感情・価値観は日本人が可視化を苦手とする部分です。練習しながら徐々に慣れていっていただきたいです。


取材・文 中沢明子


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本記事は、月刊『理念と経営』2021年9月号「実践! 個人と組織を成長させるリフレクション」から抜粋したものです。

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