『理念と経営』WEB記事
企業事例研究2
2021年8月号
仕組みを変えれば、世界はもっと良くなる

株式会社ダンボールワン
代表取締役CEO 辻 俊宏 氏
梱包材の通販サイト「ダンボールワン」が、EC(電子商取引)市場の拡大を背景に急成長している。「新しい生活様式」のもと、増加している個人や中小の事業者の利用者からの評価も高く、梱包材通販サイトで売り上げは国内首位だ。
ハローワークで見つけた"就職先"
ダンボールワンのサイトを見ると、段ボールをサイズや用途から選べたり、緩衝材も購入できたり、見積もりが瞬時に表示されたり、その使いやすさに驚く。オーダーメイドの段ボールの場合は、発注方法に「即日」「通常」「最安」の三種類があり、「即日」は最短でその日のうちに出荷。一方「最安」は一週間以上かかるが、各地の提携工場の空き時間を活用することで価格を抑えられるのが特徴だ。IoT時代ならではの、隙間時間のシェアリングを活用したビジネスモデルなのである。
このサイトを運営する株式会社ダンボールワン(石川県金沢市)の現社長、辻俊宏さんは異色の経歴の持ち主だ。
「小中高にわたって小遣いが月100円だった」ため、創意工夫の子ども時代を過ごした。
「当時、駄菓子屋でチューブ状のジュースが1本20円で売っていました。それを5本100円で仕入れて、家の冷凍庫で凍らせて1本50円で売りました。ほかにもメンコに人気アニメのイラストを貼って売ったり……、今なら怒られますけど (笑)、お金儲けというより、人に喜ばれることが楽しかった」
ジュースやメンコに「付加価値をつける」ことで貯まった資金(約50万円)で、パソコンを購入した。ちょうどウィンドウズ98が登場した頃である。短大在学中の19歳のときには、食品のネット通販会社を立ち上げた。石川県の特産にこだわった「付加価値戦略」はここでも奏功した。だが、ある程度の規模に成長したとき、アマゾンなど巨大資本の同業者が台頭して来たことと、自分の中で「やり切った感」もあり、22歳のときに事業を売却した。
次はITを使って、できるだけアナログな、課題の多い業界にインパクトを与えたい。大手ではなく中小企業で経験を積もう―。そんな思いからハローワークで就職先を探し、たまたま見つけたのが能登紙器(ダンボールワンの前身)だった。2005(平成17)年7月のことだ。
写真提供 株式会社ダンボールワン
取材・文 編集部
本記事は、月刊『理念と経営』2021年8月号「企業事例研究2」から抜粋したものです。
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