『理念と経営』WEB記事

一緒に考え挑戦し仲間と共に失敗から学ぶ

株式会社サイバーエージェント 専務執行役員 石田裕子氏

試行錯誤を繰り返し、飛躍的な成長を遂げた企業として、サイバーエージェントが挙げられる。同社で働く石田氏は社内で「女性初」の役職をいくつも経験する凄腕の持ち主だ。しかし、そのような華々しいキャリアの裏には、億単位の損害を会社に与えるなど、大きな失敗エピソードがあった。

大きな失敗をするたび
自分自身が気づきを得た

新卒でサイバーエージェントに入社した石田裕子氏はインターネット広告の営業部署に配属されると、次々と新規顧客を開拓。2年間で13回も社内表彰を受けるなど順調にキャリアをスタートしたかにみえたところに、最初の試練が待ち受けていた。

「広告の受注を巡ってお客様とトラブルを起こしてしまったのです。結局、口頭による約束だけで正式に契約書を交わさなかった私のミスということになり、会社に億単位の損害を与えてしまいました」
まだ入社二年目の社員にとってあまりに大きな失敗である。それ相応の責任をとらされたであろうことは想像に難くない。
「上司からは『契約を証明する証拠がない以上、非はこちらにある。お客様のせいにしてはいけない』と厳しくいわれました。当時の私は、なぜ自分の落ち度なのか納得できず、それが態度に出てしまっていたのです。その言葉にあらためて自分の未熟さを痛感しました」
ただし、咎められたのはそこだけ。担当を外されることもなかったというから、実質的に不問に付されたといっていい。それが『挑戦した敗者にはセカンドチャンスを』というミッション・ステートメントを掲げるサイバーエージェントのスタイルなのだ。

「そのころはインターネット広告自体がまだ新しい商品で、何が正しいのか誰もわかっていなかったこともあって、『会社全体が失敗をするな』ではなく、『みんなで挑戦しながら最適解を探そう』といった雰囲気でした。それはいまも変わっていません」そして石田氏は翌年、営業チームのリーダーに抜擢されると、再び失敗を犯す。

「早く確実に結果を出したいという焦りから、自分の成功体験どおりのやり方をメンバーに押しつけてしまったのです。気がついたらメンバーは、私の指示がないと動けなくなっていました。失敗するから学びがあり成長する、そのことは自分がいちばんよくわかっていたはずなのにそれをすっかり忘れ、メンバーの貴重な機会を奪っていた……。私はすぐに、自分のやり方にあてはめるのはやめることにしました」

減点方式の評価をやめて
一緒に成果を作り出す

だが、部下に自由にやらせれば、しなくてもいい失敗や遠回りが増え、ひいてはチーム全体の業績が落ちるということになりはしないのだろうか。

「もちろんリーダーとしてチームのパフォーマンスを落とすことはできません。そこで、メンバー自身に考えさせる、ヒントを与える、時には失敗も見守るというように、成果を出すためのマネジメントのパターンを複数もち、相手に合わせて使い分けるようにしました。どうすればいいか一緒に考え挑戦し、仮に失敗したとしても、一緒に失敗から学ぼうというスタンスでアプローチしたところ、向こうから思いもよらぬアイデアが出てきて、逆に教えられたこともあります。結局、チームリーダーだからといって、最初から全部正解を知っているわけではないのです」

取材・文 山口雅之
写真提供 株式会社サイバーエージェント


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本記事は、月刊『理念と経営』2021年7月号「特集」から抜粋したものです。

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