『理念と経営』WEB記事

素人目線でゼロから作った“スーツに見える作業着”

株式会社オアシススタイルウェア
代表取締役 中村有沙 氏

洗濯機で手軽に洗え、どんな仕事のシーンにも対応できる「スーツに見える作業着」が、急速に売り上げを伸ばしている。出発点は現場社員がもらした、ある“ボヤキ”。そこに気づいたのが中村さんだ。

工事現場や清掃作業のスタッフといえば、作業服で働く姿が一般的だろう。その「常識」をスーツに見える作業着「WWS/ダブリューダブリューエス」という商品によって、覆くつがえそうとしている企業がある。オアシススタイルウェア――3年前の設立以来、急拡大しているアパレル会社だ。

新しい価値をゼロから生み出したい

同社の代表を務める中村有沙さんは異色の経歴の持ち主でもある。2011(平成23)年に東京大学経済学部を卒業後、水道工事業を行う、当時社員20名ほどのオアシスソリューションに就職した。同級生たちが大手メーカーや商社、金融会社などに進路を決めるなか、中小企業をあえて選んだのは彼女だけだったという。
「きっかけはGMOインターネットの熊谷正寿代表の講演に刺激を受けたことです。話を聞きながら、新しい価値をゼロから生んでいくような仕事をしてみたい、と思ったんです」
代表の関谷有三氏が06(同18)年に創業したオアシスソリューションは、さまざまな新しいビジネスを意欲的に模索していた。その将来像に惹ひ かれた彼女は、同社での最初の四年間、営業職として活躍。その後、事業の拡大に伴って人事部の必要性を感じ、関谷社長に直談判して新たに部署を作った。
「スーツに見える作業着」というアイデアを思いついたのは16(同28)年、採用活動のための企業イメージの改善に取り組んだときのことだった。創業10周年というタイミングでもあり、ユニフォームを刷新することになったのだ。

なぜか気後れしてしまう自分自身にショック

「最初は作業着のカタログを眺ながめることから始めました。でも、ピンと来るものが見つからず、それなら自分たちで作ろうということになったんです」
現場の社員とも話し合い、デニム風やつなぎ風のデザインも検討した。だが、顧客の前に出ることを考えると、カジュアル過ぎる作業着は支障もある。そんなとき思い出したのが、社員の一人のこんな言葉だった。
「営業さんはスーツだから、仕事終わりにそのまま飲みに行けるからいいよね」
思えば彼女自身、時折、作業着姿で営業に行くと、なぜか気後れを感じることが確かにあった。
「一度、街で大学の同級生にばったり会った際、スーツ姿で働く相手を前に引け目を感じてしまって。どうして充実感を持って働いているのに、そんなふうに感じるんだろう、と自分自身にショックを受けたんです」
ならば、現場スタッフも営業職のようにスーツを着て作業ができれば、もっと自由な気持ちで働けるようになるのではないか。
「仕事終わりのデートにも着ていける作業着」――この言葉をキーワードに水道工事の作業に適した撥水性や機能性を追求すること1年半。試作を繰り返して完成したのがスーツに見える作業着だった。

取材・文 稲泉連
写真提供 株式会社オアシススタイルウェア



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本記事は、月刊『理念と経営』2021年5月号「小特集」から抜粋したものです。

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