『理念と経営』WEB記事
特集
2021年5月号
祝祭性の空間的熱量を新たな文脈へ昇華させる

株式会社CRAZY 代表取締役社長 森山和彦 氏
昨年は約二一万組の結婚式が延期・キャンセルとなり、大ダメージを受けたブライダル業界。そのような中、オリジナルウェディングを手掛ける株式会社CRAZYは、既存の形にとらわれないユニークなサービスをいち早く展開した。多様化していく結婚式のニーズや選択肢を模索できたことが、イノベーティブな未来構想へとつながった。
打ち出した三つの方針で多くの気づきを得た
コロナ禍で最も影響を受けた産業のひとつに、ブライダル業界がある。オリジナルウェディングブランド「CRAZY WEDDING」「IWAI」「BENE-」を展開、急成長を遂げてきたCRAZYの森山和彦社長が語る。
「年間一・五兆円の産業規模が、約八〇〇〇億円になったと言われています。半分近い市場が延期という形も含めて喪失してしまったということです」
危機的状況の中で、森山社長がいち早く打ち出したのが、三つの方針だった。まずは、キャッシュフローの確保。そのために、経費管理についても社員一人ひとりに任せていたところから方針を変えた。
「らしくない、と言われましたが、一円単位で支出を見直し、初めて決裁フローも作りました。億単位でコストが下がりました」
そして二つ目の方針が、ご契約いただいている新郎新婦への対応やフォローだ。実は知られざる厳しい状況が起こっていたのだという。
「これまで経験したことのないコロナ禍の中、結婚式をするべきか、しないべきか。周囲の意見は本当にバラバラで、これが新郎新婦を苦しめていたんです。おめでたいはずなのに、責められてしまうケースもあり、多くの新郎新婦がつらい状況に置かれていました」
三つ目の対応が、新規の事業機会創造への取り組み。昨年五月にはお祝いの機会をネット上で創出するサービス「Congrats( コングラッツ)」を発表。いわゆるオンライン結婚式である。
「私たちがやってきたのは、人生を編集しながら感動を作ることでした。改めてわかったのは、そのためにはしっかりとしたコンテンツが必要になる、ということです。いい脚本を作ったり、映像を駆使したり。おかげで、オンラインでのコンテンツ配信の技術を身につけることができました」
そしてもう一つ、はっきりとわかったのが、オンラインには別のポテンシャルがある、ということ。
「お祭りもそうですが、祝祭性の高いものは、やっぱり空間の熱量が必要なんです。それは、オンラインには置き換えられない。したがって、リアルの祝祭性がなくなることはない。
一方で、結婚式というリアルイメージが強いものでも、コンテンツが魅力的であればオンラインでもリアル以上の需要があると感じました」
結婚式のニーズは多様化している。これから、さらに多様化していく可能性がある。その需要に応えられる力を手に入れればいい、ということに気づけたのだ。
「業界には閉塞感がありますが、私たちは常に明るいです(笑)。新しいことに、常にチャレンジしているからです」
写真提供 株式会社CRAZY
取材・文 上阪徹
本記事は、月刊『理念と経営』2021年5月号「特集」から抜粋したものです。
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