『理念と経営』WEB記事

“遠くをはかる者”は生き残る

ミッションとバリューの共有が想定以上の成果を生む

株式会社友安製作所
代表取締役社長 友安啓則 氏

現在、カーテンレールや壁紙など多彩なインテリア商材を主にネットで販売している友安製作所。同社がユーザーや異業種と接する「場」を積極的に設けている理由とは――。

入社するなら自分で稼げ。
ただし、本業以外で

父親の病気をきっかけに友安啓則氏は、10年に及ぶアメリカ生活に終止符を打ち、家業の友安製作所に入社を決める。だが、その決断を2代目社長の父は歓迎しなかった。

「父の会社はハンガーフックなど線材加工品の製造販売を生業としていました。しかし、当時は中国製の安価な製品に押され、経営は火の車。私を雇う余裕がなかったのです。それでも一緒に働きたいと言い張ると、だったら半年間は月15万円だけ払ってやるが、その分は自分で稼げ、しかも、本業とは別のことという条件付きです。おそらく、私が手伝っても立て直すのは無理だとわかっていたのでしょう」

15万円の給料を手にするには、毎月100万円くらいの売り上げをつくらなければならない。友安氏が目をつけたのはカーテンレールだった。

「たまたま足を踏み入れた百貨店で、アメリカのDIYショップなら5000~6000円のカーテンレールが2万~3万円で売られているのに気づき、なんでそんなに高いのか父に尋ねると、ブランド品だからだと言うのです。でも、建材メーカーのブランドなんて一般の人は知らないじゃないですか。それで、海外で直接卸した価格で仕入れてきて安く売ることを思いついたのです」

この目論見が見事に当たると友安氏は、今度は父を口説いて手にした30万円を元手に台湾に渡り、小ロットで取引してくれるメーカーを探して契約。仕入れたカーテンレールを新たに立ち上げた自社ブランド「カラーズ」の製品として販売を始める。

「販路なんてないのでホームセンターや百貨店に飛び込み営業です。インテリア業界でそういうのは珍しかったようですが、門外漢で常識や慣習を知らなかったのが幸いしました。商品を見てもらえれば品質がいいのは伝わるし、中間業者が入っていないから値段は安い。面白いように売れました」

さらに追い風となったのが、その頃に相次いで登場したインターネット上のショッピングサイト。ある大手のサイトに出店すると、わずか10日で売り上げが20万円を超えた。

これを見て友安氏は飛び込み営業からEC(電子商取引)にシフトし、さらにネジやボンドなどカーテンレールの取り付けに必要な副資材も商品ラインナップに加えると、売り上げは急上昇。さすがに一人では対応できなくなって、社員も大幅に増やした。ところが、そこで思わぬ問題が勃発する。

大事なのはインテリアに
関心のある人を増やすこと

「あるとき、社員から矯正下着や栄養ドリンクを売ろうという意見が挙がってきて愕然としました。会社が大きくなってきたらそれまでは自分がやっていた、扱う商品の種類や品質の決定も、社員に任せないわけにはいきません。けれどもその基準が人によってまちまちでは、会社としての一体感が失われてしまいます。そこで初めて私は、会社にはミッションが必要なのだということに気づいたのです」


取材・文 山口雅之
写真提供 株式会社友安製作所


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本記事は、月刊『理念と経営』2021年4月号「特集」から抜粋したものです。

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