『理念と経営』WEB記事

安易な現状肯定を排し、 圧倒的なリーダーシップで 変革のチャンスをつかむ

ワタミ株式会社  代表取締役会長兼グループCEO 渡邉美樹

甚大なダメージを被った飲食業界。日本を代表する外食チェーン「ワタミ」擁するワタミグループもその例外ではない。未曽有の経営危機をどう乗り切るのか。渡邉美樹代表取締役会長兼グループCEOによる非常事態の経営論――。

ニーズに応じた商品を
どれだけ提供できるか

——2021年はどんな年になるとお考えですか?
渡邉 厳しい一年になると考えています。コロナは経済規模を縮小させ、生活スタイルを大きく変えてしまいました。消費はもうかつてのようには戻らないでしょう。昨年後半の需要は政府のキャンペーンによる仮需要でしかない。安易な現状肯定は極めて危険です。
 オフィス街の需要が中心だった居酒屋は大打撃を受け、ワタミは20年の上期に91店舗を閉店しました。あと100店舗は閉めないといけないと思っています。しかし、閉めただけでは社員の行き先がない。会社は何のためにあるのかと言えば、社員の幸せのためにあります。社員を守れないなら、存在する意味がない。そこでオフィスから住宅街を中心に出店を進めるのが新業態の「焼肉の和民」です。特急レーンや配膳ロボットを使って接触を減らし、ニューノーマルにも対応します。

——世の中の変化に対応していかないといけない、と。
渡邉 感染の拡大後、ファミリーの外食は「ハレ」の場面になってきています。実際、国産和牛がメインの食べ放題店「かみむら牧場」は大変な人気になっている。よりリーズナブルな「焼肉の和民」がここに加わります。
「から揚げの天才」「bb.q OLIVE CHICKEN café」でテイクアウトやデリバリー需要に対応し、巣ごもり需要は「ワタミの宅食」の従来のお弁当・お惣菜のお届けに加え、家で調理もできるような有機野菜を中心としたボックスや調理素材のキットなど、さまざまなチャレンジをしています。変化のなかで必要な商品をどれだけ提供できるか、が勝負です。お客様のニーズはどんどん変化していきます。最も大事なことは変化することです。変化するものが生き残るんです。

危機的状態のときには
迅速な意思決定が必要

——会社が素早く変化するために、何が必要でしょうか。
渡邉 圧倒的なリーダーシップです。危機的状態のときは、迅速な意思決定が必要です。先のことがわからない中では、責任を取れる人間が決断しないといけない。ワタミも昨春から営業部隊以外のすべて、生産や仕入れ、管理部門などを私の直轄組織にしています。
 一昨年に会社に戻ってきて、びっくりしたことがありました。売り上げは落ちているのに、本部の人員が3倍以上に増えていたのです。ありえないことですが、組織は何もしなければこうなるんです。シビアな経営ができないと、本来はいらなかった仕事が増えていく。
 私は、この仕事がなかったら会社が潰れる、という仕事だけを残し、営業を強化するために多くの本部社員を現場に配置転換しました。あのままだったら、会社は潰れていたと思います。経営というのは、恐ろしいんです。私は国会議員の間も二週間に一度は会社に来ていましたが、変化に気づけなかった。みんな自分に都合のいい情報しか言わないからです。
 その意味で、後進に経営を委ねたけれど心配だ、という経営者は戻ったほうがいいと私は思っています。何より経験が違う。100年に一度の出来事です。ただの不景気ではない。それまで積んできた厳しい経験を、今こそ生かした方がいい。

取材・構成 上阪 徹
撮影 鷹野 晃


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本記事は、月刊『理念と経営』2021年1月号「特集」から抜粋したものです。

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