『理念と経営』WEB記事

新たなスタンダードをつくるアントレプレナーたち

アパレルの余剰在庫を廃棄から救え!

株式会社ウィファブリック代表取締役社長 福屋 剛

多様化するファッションニーズに合わせて、衣料の供給量は増えるばかり。そして、余った在庫は大量廃棄に追い込まれる――。この構図を変えたいと立ち上がったのが、ウィファブリックだ。同社はどのように、業界特有の課題解決に取り組んでいるのか。

入社した繊維商社で抱いた「違和感」

世界中で1年間に廃棄される衣料の量を、どれだけの人たちが知っているだろうか。その数は約220億着――世界の人口の一人ひとりが4着の衣類を買い、同じ4着を捨てている計算だという。

この社会課題の解決をテーマに掲げて2015(平成27)年に設立されたのが、福屋剛さんが代表を務めるウィファブリックだ。同社の主要なサービスである「スマセル(SMASELL)」は、アパレル企業が余剰在庫を手軽に売買できるBtoBのマッチングサイト。1000社以上のアパレル事業者が10万点の商品を掲載しており、本来は廃棄や二束三文で業者に売り渡されていた衣料や生地が、流通価格の30~99%でバイヤーに販売されている。

アパレルメーカーとフリマユーザーなど個人バイヤーをマッチングするサービス、と言えばいいだろうか。「商品が細分化・多様化し、その入れ替えのサイクルが速くなればなるほど、流通しなかった在庫は増えていきます」と福屋さんは指摘する。

「そのように世界中で捨てられている廃棄衣料を、僕らが資源として循環させる。最終的には国境を越えてシェアされる新しいシステムを作り上げたい、という思いを持っています」

福屋さんが「衣料廃棄ロス」という社会問題をビジネスに結び付けたのは、大学卒業後に入社した繊維商社で、ある「違和感」を抱いたのがきっかけだった。学生時代からファッションと音楽が好きで、そのルーツを辿って世界中を旅した時期もある。だが、意気込んで働き始めたアパレルの業界で、彼は次のような体験をすることになったという。

「商社時代、僕は自ら商品を企画し、新しいブランドを立ち上げる仕事をしていました。しかし、仕入れ先と一年かけて議論を続けて製品化した服も、売れ残った分は一年以内に廃棄処分されてしまうわけです」

「ここから、ここまでを廃棄しておいて」と書類で指示され、大量の衣服が積まれた倉庫で産廃業者のトラックが来るのを待つ。それはアパレル業界では当然の慣習だったが、「まるで自分の子どもを捨てるような罪悪感」を彼は抱かずにはいられなかった。

業界で働く人々も見て見ぬふりだった

ウィファブリックを設立した際、福屋さんが事業としてまず始めたのは、「RDF」というプロダクトブランドだ。衣料品の生産過程で売れ残った糸や生地を回収し、新たなデザインの服として再生させるブランド事業である。

取材・文 稲泉 連
写真提供 株式会社ウィファブリック


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本記事は、月刊『理念と経営』2020年12月号「小特集」から抜粋したものです。

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