『理念と経営』WEB記事

「市場の変化はビジネス創出のチャンスだ!」

「スクラップ・アンド・ビルド」を繰り返し
ニーズの変化に即対応する“地域の台所”

株式会社ゴーストレストラン研究所

新型コロナウイルス禍により、にわかに脚光を浴びる、店舗を持たない業態「ゴーストレストラン」。そのトップランナーとも言うべきスタートアップの若き経営者は、はるかな「食の未来」を見据えていた――。

「飲食業界のDX化」の最先端

  コロナ禍は外食産業に深刻なダメージを与え、「中食需要の急拡大をもたらした。
 飲食業界の激変のなか、いま脚光を浴びているのが、「ゴーストレストラン」と呼ばれる新しい業態。実店舗を持たず、デリバリーだけに特化して、配達は代行サービスに任せるというビジネスモデルだ。
 欧米や中国ではすでに盛んな業態だが、日本では浸透していなかった。このゴーストレストランの、日本におけるトップランナーが「ゴーストレストラン研究所」である。昨年1月に設立され、わずか5坪のキッチンからスタートしたが、急成長を遂げ、今年6月には3倍の広さの物件に移転リニューアルした。
 現在は、東京・西麻布の住宅街に「ゴーストキッチンズ」を構え、そこから一二もの店(ブランド)を運営している。店には、中華料理店、トムヤムクン専門店、具だくさんスープの店、スンドゥブ専門店などがある。それらの店はネット上にのみ存在し、実際には一つのキッチンで料理が作られている。調理に当たるスタッフも、12の店全体で3~4人のみだ。
 キッチンには、店ごとのタブレット端末が置かれていた。そこに入ってくる注文に応じて調理し、ウーバーイーツや出前館などの宅配代行サービスの配達員が品物を取りに来る。
 現金決済はゼロ。レジのお金が合わずに延々と確認作業をするような面倒からも解放されている。
 同社の創業者・吉見悠紀社長(写真中央)は、「DX(デジタル・トランスフォーメーション)化の流れを飲食ビジネスと結び付けたとき、何ができるだろう?」という発想から、ゴーストレストラン業界への参入を考えたという。
 もっとも、欧米等で盛んだからといって、日本でも定着するとは限らない。創業前、「ゴーストレストランは日本ではうまくいかないだろう」という忠告も受けた。
 「日本はコンビニが津々浦々に普及していて、あらゆる食べ物が買える。そもそも国土が狭いから、広い国に比べ、食べ物を宅配してもらうことの価値は低い――そういう意見をよく聞かされました」
 だが、創業後、それらのマイナス要因の影響は感じなかったという。働く女性の増加、スマホの普及などの社会の変化によって、想像以上に、日本でもフードデリバリーを求める声の高まりがあったのだ。

「店主導」から「客主導」への大転換

  ゴーストレストランは、実店舗を構える既存の飲食店に比べ、初期投資も人件費も格段に安い。最大の強みは、市場や需要の変化に迅速に対応し、店のスクラップ・アンド・ビルドができることだ。実店舗ではそう簡単にはいかない。
 「ゴーストレストランで僕らがやろうとしているのは、食の提供手法を『お店主導』から『お客さん主導』に転換するということです。
従来の飲食店が100%作り込んでからオープンするとしたら、僕らは60%くらいの段階でオープンします。残り40%は、お客さんのニーズに合わせてどんどん変えていくのです。そういう変化を重ねるうち、その地域のニーズにぴったり合った店になっていきます。だからこそ、うちの基本コンセプトは『地域の台所』なのです」

取材・文 前原政之


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本記事は、月刊『理念と経営』2020年11月号「特集」から抜粋したものです。

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