『理念と経営』WEB記事

みんなの意見を引き出せば、強い組織をつくり出せる

サイボウズ株式会社 代表取締役社長 青野慶久

働き方改革の先駆的企業として知られ、「100人いれば100通り」の働き方を提唱するサイボウズ。かつては「長時間労働は当然」という空気が蔓延する成果至上主義の会社だった。離職率28%という状況から、同社はいかに変革を遂げたのか―。

全員リモート勤務で気づいた“情報格差”

サイボウズはメールやスケジュール管理など、組織内の業務効率を上げるためのグループウエアを開発・販売する会社である。同社は、残業の見直し、育児休暇制度の充実、さらにはリモートワークにも早くから取り組むなど、自由な働き方ができる会社としても知られている。
 コロナ禍に際しても、他社に先んじて全社一斉にリモートワークに転換した。入社式もオンラインで行ったという。

———2月28日からリモートワークに切り替えたと伺っています。

青野 その前から出社するのが心配な人は家で仕事をしてもいいと言っていたのですが、28日からは、できれば会社に来ないようにという指示に変えたんです。

———全社、在宅勤務にすると?

青野 はい。今回、全員がリモートワークになってわかったことが結構ありました。その多くは私個人の反省なんですが……。

———どんな反省なのでしょう。

青野 特に会議についてです。社員みんなには「自由に働いていいよ」と言いながら、私自身は〝昭和型〟なので、出張などを除いて出社できる日は会社に来ていたのです。自分が主催する会議も会議室に人を集めてやっていました。会議室に来られない人にはオンラインでつないでいたのですが、「後ろの人の声が聞き取りにくい」とか、「会議の雰囲気がつかめない」という意見が出ていたのです。

ところが、私も自宅から参加するようになると、みんなマイク付きで話していますから声も聞き取りやすいし、雰囲気も共有できて「随分やりやすくなりました」と好評なのです。いままでは私のせいでやりにくくしていたんだと痛感しました。会議もそうですが、私がオンラインで参加していると、すべての社員が私に等しくアクセスできるんです。これからは出社しないで「バーチャル社長」(笑)でいこうというのが、私の反省です。

やるべきは、管理ではなく文化の浸透だった

———リモートワークの取り組みは10年ほど前からですか。

青野 確か2010(平成22)年くらいからだったと思います。

———最初はやはり戸惑いがあったとお聞きしています。

青野 はい。全社員を対象に月に4日まで在宅勤務を認めるという形で、試験的に運用を始めました。すると現場からは、いろいろ懸念する声が上がってきました。成果がちゃんと出せるのかとか、モラルが下がるんじゃないかとか、勤務時間などをどう管理すればいいのか、コミュニケーションコストが上がるんじゃないか、情報漏洩のリスクはどうするのか、などですね。

それを1個ずつ細かく管理していきました。成果物が上がっているか上司にチェックさせたり、本当に働いているのかを見張るためにも細かくコミュニケーションを取るようにと言ったり……。

———それは大変ですね。

青野 そうなんです。だんだん、こういうことをやっている意味はあるのかと思うようになっていき、管理するよりも、「そもそも社内に公明正大、うそをつかない、隠さないという文化ができていればいいんじゃないか」ということに気づくのです。やるべきは管理ではなく文化の浸透だと。それさえできれば余計な管理コストはかけなくていい。その文化の浸透を10年かけてやってきた感じです。

———そのほか気づいた点は?

青野 やはり、できるところから一歩ずつやる、ということですね。サイボウズでも、すべての職種が同じようにやれているわけではありません。例えばコールセンターです。この部署は、お客様情報を見ながら対応するので、セキュリティーの問題があって在宅で電話を受けることができません。反対に、どんな会社もリモートがまったくできないということではないと思うんです。できるところから、まず始めてみる。工夫すれば、オンラインは思った以上にやれるようになっていくと思います。

取材・文 中之町 新
写真提供 サイボウズ株式会社

本記事は、月刊『理念と経営』2020年8月号「企業事例研究1」から抜粋したものです。

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