『理念と経営』WEB記事

今こそ、うちなる常識を覆せ!

コロナ・ショックは、
変容[トランスフォーメション]の好機だ

株式会社経営共創基盤(IGPI)代表取締役CEO 冨山和彦

経済活動のほとんどすべての領域で、かつてない変化が起きている。極めて厳しい状況だが、古い経営システムを大きく変える絶好のチャンスでもある――。企業再生のスペシャリストが提言する、危機を生き抜く経営術。

非常事態に行うべき8つの鉄則

 新型コロナウイルスによる危機は、これまでの危機を上回る破壊性を持っています。より広い産業と地域を、より長期にわたって巻き込んでいくことになるでしょう。この危機は、感染症リスクに備えるために人々がさまざまな経済活動を控えることから生じています。つまり、実体経済から始まっているのです。
 まず打撃を受けているのは観光、宿泊、飲食、エンターテインメント、日配品や生活必需品以外の小売り、住宅関連などのローカルなサービスです。これは私が以前から「L型」と呼んでいる経済領域で、今や日本のGDP(国内総生産)の約7割を占める基幹産業群です。
 しかも、その多くが中堅・中小企業に担われており、非正規社員の多い産業でもあります。今や日本の勤労者の約8割は中小企業の従業員または非正規雇用が占めており、ローカルなサービス産業の危機は非常に多くの小さな企業や労働者とその家族を厳しい状況に追い込むことになります。
 今後は、私が「G型」と呼んでいるグローバルな経済圏で世界展開している大企業とその関連の中小下請け企業へと経済収縮の大波が襲っていくことになるでしょう。そして、この段階での衝撃を受け損ねると、次は金融システムが傷んで今度は金融危機の「F型」クライシスの大波が起きかねません。
 極めて厳しい状況がすでに始まっていますが、過去の経済危機の歴史において、同じ業種でも企業の生死を分けたのは以下の三つです。「危機到来時における現預金の潤沢さ」「金融機関との従来からの信頼関係」、そして「平時における稼ぐ力と自己資本の厚み」です。
 今、経営者が行うべきは、次の8つです。
①最悪の想定を置き、最善の準備をすること
②バッドニュースを明らかにし、透明性を保つこと
③短期的なPL目標は捨て、日繰りのキャッシュ管理にこそ注意すること
④銀行から借りられるお金はとにかく早め早めに、事態が悪化する前に徹底的に借りておくこと
⑤何を本当に残すべきかを見極め、「トリアージ」(優先順位)を行うこと
⑥必要であれば事業再生のプロを信頼できる人物から紹介してもらい、話を聞くこと
⑦手段に聖域を設けないこと
⑧危機はチャンスと心得て、周りの空気に流されずに新しい事業のための投資や買収に踏み出すこと
 危機の経営の第一のメルクマール(指標)は何といっても生き残りです。しかし、同時により良く生き残らないといけない。危機が去った後に、誰よりも早く反転攻勢に転じるということです。

改革、変容し続けなければ
持続的な成長は取り戻せない

 日本企業はこの30年、売り上げ成長、収益力、生産性などに大きな課題を抱えてきました。問題の根源は、稼ぐ力が落ちたこと。その背景にあるのが、日本を奇跡的な長期的成功に導いた日本的経営と、それに連動して構築されてきたさまざまな社会システムです。その耐用期限が、もう過ぎていたのです。

構成 上阪 徹
撮影 鷹野 晃

本記事は、月刊『理念と経営』2020年7月号「特集」から抜粋したものです。

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