『理念と経営』WEB記事

孔子、朱子、陽明、金次郎を貫くもの(九) ―― 晩年を中心に(上)

順風満帆[まんぱん]でも、日々修養を重ねて立派になる

 一九六三年十一月二十二日、大きな改革を遂げようとしたケネディ米大統領は、改革に反対する人たちに暗殺されました。追悼式には世界中のトップが集まってケネディ大統領の功績を讃[たた]えました。いちばん印象に残る挨拶をしたのは、フランスのド・ゴール大統領です。「義務を果たして、あなたは兵士の如く死んだ」――。
「ソルジャー(兵士)」ではなく「リアルソルジャー」と言っています。自分が犠牲になって、耐えて耐え抜く「本物の兵士」という意味です。
 王陽明が五十七歳で亡くなったことは、前号で触れましたが、王陽明もリアルソルジャーでした。義務を果たすために自分が犠牲になって、耐えて耐え抜いて去っていきました。
 朱子も六十六歳の頃に、南宋[なんそう]の政治家、韓侂冑[かんたくちゅう]とその一派が、権力をより強固にするために、韓侂冑の専横[せんおう]を批判した朱子に対して、一一九五(慶元[けいげん]元)年、「偽学[ぎがく]の禁(慶元の党禁[とうきん])」と呼ばれる弾圧を始めたわけです。すなわち、朱子学は偽学として、朱子はそれまでの官職をすべて剥奪され、著書もすべて焼かれてしまいました。
 そして一二〇〇年、そうした不遇の中、朱子は七十歳の生涯を閉じますが、そのとき、前にも述べましたが、自分を信じてついてきてくれた門弟に対して、「朋[とも]有り遠方より来[きた]る、朋の人生を誤らせり」という言葉を遺[のこ]します。朱子もリアルソルジャーです。戦って戦って死ぬ間際まで戦いました。
 一方、二宮金次郎は五十代後半から「報徳仕法[ほうとくしほう]」が認められて、引く手あまたになってきます。どんな村でも再建し、〝偉人〟と呼ばれるようになっていきました。やはり、そういう偉人に共通しているのは、地位や富を得て、社会的に認知されても、何ら生き方や考え方を変えず一貫しているということです。人間はお金を手にすると、ややもすると貧乏なときのことを忘れて、「易[やす]き」に流れがちです。リアルソルジャーはそういう生き方はしない。貧しかろうと、お金があろうと「自分はこう生きる」という生き方を貫いて人生を終えるわけです。
 金次郎は五十代後半から脚光を浴びますが、六十歳のとき、小田原藩主の大久保忠真[ただざね]から非常に認められます。しかし、忠真が亡くなり、小田原藩を引き継いだ孫が、二宮金次郎は領内に入ってはならん、という禁止令を出します。
 このときに金次郎は絶望します。門弟たちも「大変なことになった」と駆けつけます。そのとき金次郎が漏らした言葉が、またいいのです。『二宮翁夜話[にのみやおうやわ]』の中にありますが、「君子固[もと]より窮[きゅう]す。窮すれども濫[みだ]れず」――。弟子たちも、その言葉に感動します。
 最大の危機に瀕しても決して乱れることはない。夢が大きければ大きいほど、使命が大きければ大きいほど、楽しいものなんてありません。なくても、耐えて耐え抜いていくところに喜びを見いだす境地、これが孔子の教えです。どんなに順風満帆であっても、絶えず日々修養を重ねてこそ、人は立派になっていくのです。

本記事は、月刊『理念と経営』2020年7月号「伊與田先生に学んだ、論語と経営 (39)」から抜粋したものです。

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