『理念と経営』WEB記事

“異分野”連携が革新を生む

株式会社wash-plus 代表取締役 高梨健太郎

コインランドリーにチャンスを見た高梨社長。日常生活で見つけたヒントを生かし、水だけで汚れを落とす独自のコインランドリーを立ち上げ、さらにはアプリで洗濯乾燥機の操作や支払いができるスマートランドリーにまで発展させた。それを可能にしたのが”連携“だった。

連携が生み出した画期的なコインランドリー

「洗剤を使わないのにきれいに洗える」「スマートフォンの操作でドアをロックしたり、ガラスを曇くもらせたりもできる」―。そんな次世代型のコインランドリーがいま注目を集めている。しかも、驚くなかれ、これを企画開発したwash-plusは社員数わずか五名の中小企業なのである。
 高梨健太郎社長はもともと不動産会社の二代目社長。商品は地球なのだから、一生食いっぱぐれることはないと思っていたという。ところが2011年3月14日を機に、高梨氏の人生は一変する。
 「東日本大震災で地元の浦安では液状化が起こり、わずか3カ月で3000人の賃貸物件の入居者が、この地域から出ていきました。土地の売買は成立せず、社員の給料の支払いにも窮する日々に、不動産に代わる新機軸を考えざるを得なくなりました」

すぐに行動を起こしひらめきを確信に変える

そんなとき、酒の席で青年会議所の先輩である税理士が何の気なしに口にした「郊外型のコインランドリーが儲かっているらしい」という話が高梨氏のアンテナに引っかかった。調べてみると、確かにビジネスとしての可能性はありそうな気がする。そこで、論より証拠と、震災で空きが出た手持ちの物件を利用して試してみることにした。どうせやるなら何か特徴を持たせたい。さてどうしたものか。ヒントは思わぬところにあった。
「風呂から上がった一歳の娘に保湿クリームを塗るのを忘れていたら、アトピーになったらどうするのって、妻からこっぴどく怒られたんです。子どもがアトピー性皮膚炎になると、普通の合成洗剤が使えなくなるから洗濯にも苦労するのよってね」
 このとき高梨氏の頭にこんな言葉が浮かんだ。「油は水で落ちる」
 それは、以前高梨氏が千葉県の施設を訪れたとき、たまたま目にしたポスターのキャッチコピーだった。翌日電話をして確認すると、それはEプランという工業用スーパーアルカリイオン水をつくる会社のものだった。水で油汚れが落ちるなら洗剤は必要ない。これならアトピー性皮膚炎の人の衣服も安心して洗える。しかも厚生労働省のホームページには、三歳児の13.2%がアトピーに苦しんでいるとある。これだけでもかなりのマーケットだ。
 高梨氏はすぐにEプランの社長のところに駆けつけ、このイオン水が洗濯にも使えるか尋ねると、試したことはないが理論的には可能とのことだった。ひらめきは確信に変わる。だが、自社にイオン水用の洗濯乾燥機を単独で開発できるだけの体力があるわけではない。高梨氏はパートナー探しを始めた。だが、泡が出なければお客さんは満足しないと、大手製造メーカーはどこも相手にしてくれない。そんななか、唯一興味を示してくれたのが、広島県尾道市にある山本製作所だった

取材・文 山口雅之 
写真提供 株式会社wash-plus

本記事は、月刊『理念と経営』2020年6月号「特集」から抜粋したものです。

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