『理念と経営』WEB記事

社会課題の解決に迫る 「行動力」が、革新を生む

株式会社DG TAKANO    CEO&Founder 高野雅彰

蛇口に取り付けるだけで、最大95%という驚異の節水率を実現する「Bubble90」。事業を軌道に乗せた鍵は、数々の困難にあっても、本来の目的を見失わず達成するデザイン思考にある。製品開発には、父譲りの精緻な切削加工技術も不可欠だった。その経緯を高野雅彰CEOに聞いた

世界には節水という有望市場がある

  ガスコック製造会社の2代目を父に持つ高野社長が目を付けたのは節水市場だった。朝から夜遅くまで働く両親の姿を見つめていた少年時代、こんな苦労はしたくないと思いつつも、勤め人になることはまったく考えなかったという。

――起業を意識したのは?

高野 サラリーマンではなくて社長になる、と学生時代から決めていました。いくつか目標を設定していて、そのひとつは40歳までに一生分稼ぐということ。誰かの真似ではなく、世の中にないまったく新しいものを生み出したい。世界を舞台に活躍したい、といったことも考えていました。一度きりの人生ですから、妥協などするのは嫌。我慢するのが大人と言われるものですが、どうして我慢しなきゃいけないんだ。やりたいことをやりたいと、思い続けていたわけです。

――大学を出て、就職されていますね。

高野 創業者一代で急成長したIT企業に入社しました。これからのビジネスにはITが不可欠で、その本流に関わりたかったこと、起業と経営の実際を学びたかったことが理由です。そこで知ったのは、経営者と社員の断絶というか、社員って会社のことを考えて行動するんじゃないんだな、ということです。既得権益を守ることだけに汲々としていて、自ら成長しようとか、効率的に仕事しようとか、そうした努力をする人がほとんどいない。一方で、業績が際立つ社員を排除しようとする。いわゆる大企業にまで成長した企業の実態がこうなのか、と。入社時の宣言通り、3年で退職しました。

――すぐに起業したのですか。

高野 海外を訪ねたり、プログラミングを学んだり、充電や起業準備をしていました。そのうちに前職の上司の知人から、節水製品の販売を手伝わないかと声をかけられたんです。調べてみると、世界には水資源の乏しい国・地域が多く、気候変動によって水不足が深刻化している。節水ニーズは世界的に高いことがわかりました。関連特許も片っ端から調べましたが、技術的に突出したものはないし、大企業の参入もない。節水は有望な市場だと確信しました。じゃあ、自分ならどんな製品で勝負するか、と考えたんです。2008(平成20)年のことです。

――どのように考えたのでしょうか。

高野 従来の節水製品でも採用している、水に空気を加えて流す仕組みをベースにアイデアを探しました。従来品は、時間当たりの流量は確かに少なくなるものの、「洗う」のに時間がかかる。つまり、必要な水の量を節約できるわけではありません。節水の対象は飲用ではなく洗浄用だから、効率的に洗い流す方法を見つければいい。で、シャワーの流れをじっくり観察すると、最初の一撃は洗い流す効果が高いものの、流れ続ける水には表面張力が働いて水同士がくっつき、洗い流す力が落ちてしまいます。それなら、水滴を高速で連射できればいいんだな、と。しかも、蛇口に取り付けて長く使えるものを考えました。

――それから製品化ですね。

高野 寝る間も惜しんで形状を考え続けました。いちばんいいアイデアが浮かぶのは、寝起きの時間帯。ですから、ノートとペンを枕元に置いて、思いついたらすぐにメモです。朝食をとりながら見直してボツにしたり、修正したり。100以上のひらめきから、方向性を4つに絞りました。
 そのうえで、父に相談すると、「どれも難しいけれど、これが一番現実的だ」と、技術者らしい視点で示してくれました。そこで、試作です。NC旋盤を借りて、部品を削り出してはテスト。修正して削り出しては、またテスト。ひたすら繰り返しました。私にとってのアドバンテージは、父に高い技術があり、その高い技術を再現する高性能な工作機械を父の会社が保有していたことです。何しろ、ガスを金属の面と面とで遮断できるバルブ部品を切削加工で作り出す技術ですから。このアドバンテージを生かせるからこそ、節水市場に参入したわけです。


水に空気の泡を含ませる「脈動流技術」を独自に開発。この技術により、Bubble90から出るほんの10%の水量で、従来の水量に匹敵する洗浄力を可能にしている

本記事は、月刊『理念と経営』2020年5月号「企業事例研究1」から抜粋したものです。

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