『理念と経営』WEB記事

その先にある 「全員イノベーション経営」を目指せ

明治大学大学院グローバル・ビジネス研究科教授   野田 稔  氏

「働き方改革」に成功している企業は、失敗している企業とどこが違うのか? そして、今の働き方改革がこれから目指すべき方向性とは? 人材マネジメント分野の開拓者であり、企業の現場にも精通している野田稔教授はこう提言する。

 「生産性の向上」から「成果の出し方改革」へ当初、「脱・恒常的長時間労働」を目指して始まった働き方改革。多くの企業が、残業時間を一律に制限するなど、改革を社員の努力任せにしました。しかし、残業を強し いられる状況は是正されないままだったのでうまくいかず、業務を見直して無駄を削る構造改革に踏み込む企業が増えていきました。
その構造改革に経営者自身が率先して本気で取り組んだ企業は、総じてうまくいっています。特集に登場する三社は、いずれもそのようなケースです。
業務の構造改革で無駄を減らせば、生産性は向上します。生産性は「インプット分のアウトプット」で計算されます。インプット――例えば社員の総労働時間を減らせば、分母が減った分だけ生産性が上がるのです。
ただし、無駄の削減はいずれ限界にぶつかります。それはいわば働き方改革の「フェーズ1」(第1段階)です。そこで終わっては不十分で、次に「いかにアウトプットを増やすか」を目指す「フェーズ2」に進まないといけません。私はこのフェーズ2を「成果の出し方改革」と呼んでいます。そして、「成果の出し方改革」のためにはイノベーションが不可欠です。
これは統計に基づく数字ではなく、私の直感で言うことですが、だいたい日本企業の一〇㌫くらいは、すでにフェーズ2に入っていると思います。

イノベーションに不可欠なのは「共感力」

  ある企業の社長が私に、「うちは文系の会社だから、イノベーションなんて関係ない」と言ったことがあります。このように、多くの人がイノベーションとインベンション(発明)を混同しています。しかし、経済学者のシュンペーターによる元々のイノベーションの定義は、「新しい組み合わせによって新しい社会的価値を生む」ということです。それができれば、たとえ要素が古くても、技術革新でなくてもイノベーションなのです。

取材・文 前原政之
撮影   小川佳之

本記事は、月刊『理念と経営』2020年4月号「特集」から抜粋したものです。

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