『理念と経営』WEB記事

――AI、IoT、クラウド、5G―― 「四種の神器」が拓く 経営の可能性

オングリット株式会社
代表取締役 森川春菜氏
取締役本部長 森川 歩氏

技術者にしかできなかった仕事を万人ができる仕事へ

橋梁やトンネルは、その多くが点検、補修工事が必要な時期を迎えている。しかし、技術者ごとに図面の描き方やメモが違い、一人の技術者に多くの業務が集中する事態となっていた。オングリットはその問題をAI、IoTの力を駆使して解決した。

「シングルマザーになった友達が、仕事がなくて困っているみたい」。
――オングリットの事業は、当時まだ専業主婦だった森川春菜氏が、ゼネコンの開発部長だった夫の歩氏につぶやいた一言から始まった。
このとき歩氏は、土木知識がない人でもCAD図面を作製できるシステムを構築していたが、データベース入力にコストが掛かりすぎるという理由で社内稟議 が通らず、システ
ムはお蔵入りとなっていた。
「建設業界は人手不足で、長時間労働や残業、休日出勤が当たり前の世界。このシステムが完成すれば、シングルマザーのように仕事をしたくてもできない人たちと、建設業界の人手不足という二つの課題をマッチングできると考えました」と歩氏は言う。
春菜氏は五万点という膨大な国土交通省の点検要領を五年間かけてデータベース化し、歩氏のシステムを完成させた。「自分のペースでこつこつと。専業主婦だからこそできたシステム開発です」と春菜氏は笑う。
「福岡よかとこビジネスプランコンテスト」で春菜氏はファイナリストに選出された。また、留学生五名で福岡市内の180の橋をCAD図面化する試験を実施したところ、そのクオリティーが高く評価され翌年もオファーをもらった。こうした実績を踏まえ、2018(平成30)年にオングリットを設立した。

AIを活用したインフラ損傷診断

  橋梁やトンネルといったわが国のインフラは、その多くが高度経済成長期に建設され、施設の老朽化が深刻な問題となっている。現在の点検業務では、技術者が現地で橋梁やトンネルの損傷部分を手書きで図面に記し、会社に持ち帰ってCAD図面化と報告書の作成を行う。夕方まで現地調査をすれば、その後の内業が深夜まで及ぶことも少なくない。点検作業ができる技術者の不足も常態化している。
これに対し、オングリットが開発したシステムでは、構造物の写真を撮影してデータをクラウドに上げれば、自動で図面化が終了。AIが画像解析によって損傷部分を抽出するほか、CADアプリを使うことで未経験者でもCAD図面化ができ、そのまま報告書として納品できる。これまで点検技術者が一人で行っていた作業(現場作業と内業)を分担することで、生産性が大きく向上した。
さらに、CAD図面化の業務をシングルマザーや就労支援施設にアウトソーシングすることで、人手不足を補う。「現在は施設にBtoBで依頼していますが、当社の規模が大きくなったら、こうした人たちを直接雇用することも考えたい」と春菜氏は話す。

本記事は、月刊『理念と経営』2020年4月号「小特集」から抜粋したものです。

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