『理念と経営』WEB記事

“花粉”が景気にどう影響を及ぼすか

株式会社第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト 永濱利廣 氏

時に思わぬことが消費や景気を左右することがあります。
あらゆる動向をビジネスに結び付ける柔軟さが大切です。

夏の気温上昇で翌春の消費が減る

政府や自治体、企業などが発表する経済指標ばかりでなく、視点を変えれば実にいろいろなものが景気動向を予測する指標になります。
例えば気温です。こんな関係がわかっています。「夏の気温が上がると翌春の消費が減る」。逆に「夏の気温が下がると翌春の消費が増える」。この関係の因子は「花粉」の飛散量です。春に花粉を飛ばすスギは夏の気温が高いと花芽がよく成長し、翌年の花粉の飛散量が増えるのです。すでに日本では4割の人が花粉症だという報告もあります。その人たちが極力外出を避けるようになり、その分個人消費が減るのです。私が算出した相関式は次の通りです。“前年の7~9月の平均気温が1度上がると、翌春の個人消費が0.9%下がる”。
昨年は、前年夏の気温上昇を受けて花粉の飛散量が多い年でした。この相関式に当てはめて試算すると、昨年春の個人消費は約5691億円減りました。逆に今年は、昨年の7~9月の平均気温が前年比で0.3度低く、その分、花粉の飛散量は少ない予測です。試算の結果、個人消費が約1462億円増えることが見込まれるのです。

花粉の飛散量で変わる個人消費とは

では、花粉の飛散量が増えると具体的にどんなものに影響が出るのか。まず、花粉症の人たちが外出を控えて家で過ごすことが多くなり、「光熱・水道費」「家具・家事用品」などの消費が増えます。花粉症の治療もするので「保健医療費」も上がります。
繁華街の百貨店まで出掛けることは少なくなり、逆に近所のスーパーには行く頻度が増えて、売り上げが伸びていきます。外食やレジャーなども控えるようになるので「食料費」「交通・通信費」「教養娯楽費」も減り、やはり外出しないと服なども新調しなくなり「被服及び履物費」も減っていきます。
花粉の飛散量が少ない今年は、去年の逆で百貨店の売り上げをはじめ外食やレジャー、アパレルなどが伸びると予想されます。

本記事は、月刊『理念と経営』2020年3月号「指標に「未来」を見る 」から抜粋したものです。

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