『理念と経営』WEB記事

「来るべきロボット社会」を私たちはどう生きるか?

グローバルビジネス学会会長 丹羽宇一郎

いずれ、マニュアル化された仕事のほとんどをロボットが担う時代が来る。
しかし、直観や感性や感覚に基づいた仕事については、これまでどおり人間の守備範囲だろう。
だからなおさら、思考の拠よりどころになる「リベラルアーツ」が重要になる ̶

リベラルアーツを磨くには「読書」が欠かせない

 来るべきロボット社会を生きる上で大事なことは、ロボットに頼り過ぎないことです。
歴史上の人物について調べるとき、スマホに向かって質問をして得られた回答だけを鵜呑み
にしてしまうようになったら、思考は停止し、その人の歴史観は希薄化します。
ロボットの持つ「記憶」と「分類」という二つの大きな機能を利用することは大事ですが、
思考さえもロボットに任せてしまうと、人間は目指すべき未来をも語れなくなってしまいます。
そうした未来の先には、ある特定の人にとっては有益なロボットであっても、
国や社会全体から見れば破滅的な能力を持つロボットが誕生する可能性だって否定できません。

 だからこそ、思考の拠りどころになる「リベラルアーツ」(一般教養)が重要なのです。
人間とは何か、ということを深く理解していない限り、技術には常にそうしたリスクが付きまといます。
原爆もしかりです。開発者たちにリベラルアーツが根付いていれば、原爆は誕生していなかったかもしれません。
リベラルアーツを磨くには、とにかく「読書」をすることです。

ロボットを知る前に、まず人間を知らなければなりません。

人間は、何百年にわたって無数の 書物を残してきました。それを読むことで、
何百年、あるいは何千年という人間の歴史を知り、人間の本質を見抜いていけるのです。
読書をしない人は、今、目の前にいる誰かを見て「これが人間だ」と理解するしかありません。人間観が、浅せん薄ぱくなのです。

 今まで私たちは、経営学をはじめとして理論を大切にしてきました。
しかしこうした理論が古くなってしまって、新たな時代に対応できていないというのが現状でしょう。

 トランプ米大統領は、無茶苦茶なことを言っているようにも見えますが、彼の根底にある感覚的なものは正しいと思います。
それは、これまで信用されてきた有識者や学識者を彼は信用していないということです。
〝あなたたちは今まで偉えらそうなことを言ってきたけれども、ひどい状況になっているじゃないか〟と否定をしているように聞こえます。
未来を描くことはできていませんが、とりあえず時代に合わなくなったものを否定していることには、一理はあると思います。

構成 長野修
撮影 中村ノブオ

本記事は、月刊『理念と経営』2019年3月号「経営指南」から抜粋したものです。

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