『理念と経営』WEB記事

競技用車いすのトップブランドを支える、独自の「こだわり」

株式会社オーエックスエンジニアリング 石井勝之社長
取材・文 山路正晃

2016年8月5日からブラジルで開催されるリオデジャネイロ五輪・パラリンピック。公式採用される競技用品には、日本製しかも中小企業の製品が少なくない。大会は、細部にまでこだわる技術をアピールする絶好の機会。選手同様、金メダル級の活躍をする「隠れたヒーロー」を取材した。

国内外のパラリンピック選手の信頼を集めるのがオーエックスエンジニアリングだ。先代のDNAを受け継ぎ、選手の声を最大限、改良・開発に生かしている。

車いすの“ポルシェ”

「オーエックスエンジニアリング」は、元々はオートバイ・ショップだった。車いす製造を手がけるようになったきっかけは、創業者の石井重行さん(故人)がオートバイ試乗中の不慮の事故で下半身不随となったことにあった。
 重行さんは、市販の車いすの「カッコ悪さ」と使い勝手の悪さに辟易し、既成品を自ら改造してオリジナルの車いすを作った。海外に行ったとき、現地の記者にその車いすを「カッコいいね」と褒められたことから、売り物としての車いすを作り始めたのだった。1993(平成5)年のことである。
 車いすメーカーとしては後発だから、既存メーカーとの違いを際立たせなければ生き残れない。そこで選んだ道が、デザイン性の高い高級車いすに的を絞ることだった。病院に置いてある車いすは2、3万円だが、オーエックスでは20~30万円という価格帯の車いすだけを作っている。そのため、オーエックス製品は「車いすのポルシェ」と呼ばれているという。
 2代目社長の石井勝之さんが言う。
「平均的な車いすの約10倍ですから、確かにポルシェみたいなものかもしれません」

そうだ、パラリンピックに出よう

10倍の価格でも売れるのは、デザイン性の高さと使い勝手のよさゆえだ。だが、どんなによい商品も、世に知られなければ売れない。そこで考えたのが、パラリンピック進出であった。
 最初は、パラリンピックに出場できそうな有力選手を社員として雇い、会社を挙げてサポートしていった。その結果、1996(同20)年のアトランタ・パラリンピックでは、オーエックスの車いすに乗った選手が金メダル2個、銀メダル2個を獲得した。車いす事業に乗り出してからわずか3年後の快挙であった。
 メダルを獲れば、マスコミに取り上げられる機会も増える。その宣伝効果は絶大だった。ただし、パラリンピック進出の意義はそれだけではない。選手たちが檜[ひのき]舞台の実戦でオーエックスの車いすを使うことで、「ここはこうしたほうがいい」という生の反応が返ってくる。これが、開発・改良するうえで最大の決め手になるのだ。
「自動車メーカーがF1レースに参戦するようなものです。競技用車いすは弊社の生産台数の1割程度で、商いとしては小さいのですが、意義はきわめて大きいのです」

本記事は、月刊『理念と経営』2016年8月号「競技用品に秘技あり! 」から抜粋したものです。

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