『理念と経営』WEB記事

女性経営者は日本を元気にする起爆剤です

キャスター 国谷裕子
世界中の女性リーダーたちの発言に触れて気づいたこと

私は1993(平成5)年から2016(同28)年の23年間、NHKの報道番組「クローズアップ現代」 でキャスターを務めました。この間、 日本の雇用は不安定化し、中間層の縮小、少子高齢化が進み、企業の競争力も相対的に低下しました。番組でさまざまなテーマを取り上げながら、この長く続く閉塞感を打破する鍵がないものかと、 ずっと考えていました。 突破口がなかなか見いだせずにいた10(同22)年、APEC(アジア太平洋経済協力)で「女性と経済」 をテーマにした国際会議のモデレーター(司会者)の機会を得たことが、私に大きな気づきを与えました。

「女性が活躍している企業のほうが競争力がある」

「ダイバーシティー(多様性) がある組織のほうがイノベーションが生まれる」

「女性が経営する会社は女性だけでなく男性にとっても働きやすい環境をつくりだす」

APECに行く前に参加したWLN(女性リーダーズネットワーク)で、世界中の女性リーダーたちの元気で前向きな発言に触れることで、私は「“女性”という切り口がある」ことに思い至ったのです。

例えば、 オーストラリアで炭鉱を経営している女性がこんな話をしてくれました。炭鉱というと男社会のイメージです。 そこで彼女は「女性だって炭鉱で働けるはず」と考えて、石炭を運ぶ女性のトラック運転手を増やそうと、運転席のレバーの位置やシートの高さなどを女性の体形に合わせて改良しました。 そうすることで、多くの地元の女性を運転手として雇用することに成功したというのです。 小さなことかもしれませんが、女性の発想が入ることで、女性の働く場や働きやすさが変わっていくことがあるのです。新しい発想のビジネスも生まれるかもしれません。

日本でもノンアルコールビールや、女性が運転しやすい自動車など、女性の発想によるイノベーションがすでに起きています。エムスクエア・ラボの加藤さんは番組で取り上げ、 最近も電話で話をしましたが、彼女が今、力を入れているのは子どもたちへの農業教育や、生産者の高齢化を見越した農業支援ロボットの開発です。 私はそこに、 母親の目線や女性ならではの社会性を感じています。

くにや・ひろこ 大阪府生まれ。1979年、米国ブラウン大学卒業。93年から2016年までNHK総合「クローズアップ現代」のキャスターを務める。11年日本記者クラブ賞、16年ギャラクシー賞特別賞を受賞。著書に『キャスターという仕事』(岩波暮店)

取材・文 編集部

本記事は、月刊『理念と経営』2017年8月号「輝く女性経営者たち」から抜粋したものです。

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