企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

激変する時代こそ飛躍のチャンス

経営学者の川上昌直先生が『理念と経営』二〇二五年八月号の「価値創造の未来」という記事の中で、「利益に『受け身』では生き残れない時代」と述べています。社長力、管理力、現場力の三位一体でブランド価値の向上に挑むべきです。

「ユニクロ」に学ぶ機能的価値

 現場力はいろいろな意味に解釈できます。新商品の研究開発の現場、あるいは新技術の研究現場など、日本の現場力は世界的にも認知される優れた製品を生み出してきました。

 しかし、例えば造船技術での日本のシェアは、一九九〇年代には四割近くを占めましたが、現在は中国五三%、韓国二八%、日本一三%です。かつて世界シェア五〇%を超えた日本の半導体しかり、他にも多くの分野で日本の製品や技術は世界の羨望の的であり、ブランド価値も高かったのです。

 経営学者であり兵庫県立大学の川上昌直教授は、「利益イノベーション」のビジネスモデル革新講座で、「激変する時代こそ中小企業にとってはビジネスの飛躍の機会」と断言し、ビジネスモデル理論では、「第一に経営理念に沿った顧客への『価値創造』を行うこと、次に『価値獲得』が大事」と述べております。

 それらを大胆にやってのけられたのが、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングの柳井正さんです。四一年前に広島中区で一号店をオープン以来、二〇二五(令和7)年の八月期には売上高三兆四〇〇五億円、経常利益は六五〇五億円(経常利益率一〇・七%)を生み出しています。

 ROE(自己資本利益率)は二〇・二%で、東証プライム市場における本年三月期の平均ROEの九・五%(全産業)と比較しても約二倍であり、ブランド価値は世界第四七位です。
 安価・気軽に入れる店や次々に生み出すヒット商品、SPA(企画から製造・販売までを一貫して行うビジネスモデル)に代表される「機能的価値」は、最大の顧客価値を生み出しています。

顧客に喜ばれ、企業も利益を上げる

  顧客価値を高めるためには、機能的な価値と情緒的な価値は基本中の基本です。二つの価値の組み合わせがイメージ資産となり、無形の意味合いや価値づけをもたらします。

 すでに簡単に機能的価値には触れましたが、情緒的価値について述べます。「フリース」「ヒートテック」と聞いただけで購入し、着用した感覚が、体験としてよみがえります。当然、販売員さんの笑顔や、動作、おもてなし、機敏さ、安心、信頼、着心地の軽さは、お客様の心の中にイメージとして記憶されます。

 グローバルに闘う上場企業としても素晴らしい業績をあげ、長年ブランド価値を高めてきたことがわかります。一〇年前に比べて売上高は二倍、経常利益は約三・五倍という確実な成長は、利益イノベーション、ビジネスモデルの革新が功を奏しているのです。

 川上先生は、ビジネスモデルとは、「顧客に喜んでいただきながら、企業も利益を上げる仕組み」と、明確に述べられています。日創研ではベネフィット(お客様の利益)とプロフィット(自社の利益)の健全な調和と述べています。自社の利益の必要性は、①社員さんの給与、②新製品や新規事業といった顧客への「価値創造」の研究・開発が中心でなければいけません。


本記事は、月刊『理念と経営』2026年1月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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