企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論
現場力
2025年7月号
ストレスが人を強くする

賃金低迷の主因は一〇・八%も下がっている“労働時間„にあります。働き方改革に伴う規制により、急速に労働時間が減少したことが大きく影響しています。働きたい人は自由意志で大いに働き、働きがいを自らつくりましょう。
働くと同時にスキルアップしている
われわれは仕事を通してスキルアップをしています。その分、給料も多く手にすることができるのです。実力も磨かず一時的な風潮や賃上げムードで手にした賃金は、必ず何らかの反動がきます。「働き方改革」も大切ですが、単純に同調圧力に乗るのではなく、自助努力することで、働きがいを手にし、仕事への希望を持つことで目標実現能力を高めることを現場力といいます。
かつて日本は、勤労・勤勉なお国柄でした。日本という国は四季に恵まれ、美しい海や山に囲まれていますが、天然資源があまり豊富ではありません。その分働くことに誠実になり、単に働くだけではなく、心を込めて学び勤める人が中心の「人本主義」が経営の主流でした。
人を大切にした当時に調査すれば、日本人の幸福度も国際的に高かったはずです。勤労は心身を労して仕事や義務に励むことです。いわば人間の基礎力です。勤労意欲に欠けた民族は滅びます。
現場力とは「勤労・勤勉に対する熱意」ともいえます。すべての職業は社会の役に立つものであり、深夜であろうと早朝であろうと、働きがいがあれば、人は使命感さえ持ちます。使命感は勤労・勤勉を生み出し、自己成長欲求と貢献欲求を満たし、充実感、達成感、自己効力感が得られます。働くことの奨励は、働く人の幸福度を高めているのです。
職場環境は好転しているが……
古屋星斗氏の著書『ゆるい職場』(中央公論新社)では、職場環境の好転を指摘しています。①休みがとりやすい、②副業・兼業に肯定的な職場、③失敗が許される、④安心して発言や行動ができる、この四点はすべて好転しています。
例えば、①の「休みがとりやすい」に対し、「あてはまる」と回答した人は、一九九九~二〇〇四年卒が三八%で、二〇一九~二〇二一年卒では六一・三%へと向上しています。
同時に、今の新入社員は会社のことが好きになっています。それなのになぜ辞めるのでしょう? 昔は職場環境への不満が少なくありませんでした。現在は、不満は解消されていますが、ストレス実感は減少しておらず、不安要因が高まっていると、古屋氏は述べています。「不安」「朝起きるとおっくうに感じる」「ひどく疲れている」という傾向が高くなっているのです。
現在の職業生活で若者が感じている不安要因は、「このまま所属する会社の仕事をしていても成長できない」(35%)、「自分は別の会社や部署で通用しなくなるのではないかと感じる」(48・9%)、「学生時代の友人・知人と比べて、差をつけられている」(38・6%)などです。
私なりの感想は、この調査結果は日本の社会課題です。①日本人のアイデンティティー(志)教育の欠如、②自分の抱える課題を深く自分で考えない(与えられることへの狎れ)、③働く意味のリテラシーの低さ、④人生観・人間観・社会観教育の稚拙さ、といったものが複雑にからみあっています。要因の一つは働き方改革の空洞化です。「働きがい」を持てない人のストレス耐性の脆弱さもあるでしょう。
本記事は、月刊『理念と経営』2025年7月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。
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