企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

企業は自社のミッションを 大切にする人財を必要としている

人間が元々持っている素質・資質、能力、可能性。それらを一回一回の行為の積み重ねを通じて現実化していくことで、徳は身につき、人は幸福になる―。アリストテレスの言葉です。

会社にどんな社員がいるかで決まる

 急成長した企業が時間と共に衰退するのは、事業の拡大に対して人財の質がついていけなくなった結果です。米スターバックスの元CEO、ハワード・シュルツ氏が来日した際、ホテルオークラで二人で対話する機会がありました。そのとき「会社の命は社員そのものだ」とする経営哲学に触れ、感動したことがあります。

 また、単に人づくりに熱心なだけではなく、①一人ひとりのチームスピリットが高く、②相互信頼関係を大事にし、③知識ではなく自主性を重んじ、④教育担当専任を置かず、⑤自主的にスキルアップできるように応募制にして、⑥定期的にスキルチェックを行っているのです。自由度の高さに加え、仕組み化されていることも、会話の中で強く印象に残っています。

 とくに、ミッションやバリュー(価値観)を大切にし、この点においては妥協しない文化があります。店舗はアルバイトと社員で運営され、採用されるとすぐのOJT(職場内訓練)があります。バリスタに認定されるまでに三回のスキルチェックが行われます。日本のように期間や時間ではなく、唯一「スキルを身につけたかどうか」のチェックを重要視するのです。

 日本は、主任の役割をこなせたから課長へという、年功序列の弊害が起きています。スターバックスだけではなく外資系企業はスキルチェックが徹底されており、スキルが未熟なまま次にいくことはできません。

「努力しなさい」だけでは脇が甘い

 日本企業の多くは個人の強み・弱みを気にする一方、スキルについてはノーチェックに近く、脇の甘さを感じます。スキルが不足していても「努力しなさい」の軽い注意で済ませています。努力不足は致命的です。スターバックスには、必ずフィードバックがあります。

 スキルの未熟さからお客様に不愉快な思いをさせ、失敗したとします。すると、起きたときに仕事を止めてでも是正のフィードバックがあるのです。あくまでもコーチング的手法です。起こったことの事実を自分で考えさせます。原因が業務上の弱みであれば、「再び起こさないようにするにはどうしたらいいか」を自分で考えさせるのです。場合によっては、配置換えが行われることもある、とアルバイトの方から聞きました。

 悔し涙を流す人もいるようです。すべて自己責任として捉え、自らの未熟さに対する反省の涙なのです。貢献することができなかった、自己成長欲求を満たすことができなかった、という悔しさです。

 四カ月に一度は人事考課があり、これまでの振り返りと、次の四カ月の目標などを店長と話し合うのです。
 「バンドレベル」(スターバックス特有の職務階級の呼び方)という職位があり、「レジに立ち、ドリンクのレシピを覚えること」を最初のステップとして、接客、周囲の手伝いなど、スキルやコミュニケーション能力を向上させていきます。その研修が明ければ、チェックを経て、バリスタ認定を受け、基本的な業務全般を行える仕組みです、バンドレベルは研修生からバリスタ(ショート)へ変わります。

 ここまでに育てるのがバリスタトレーナーの使命です。つまり、いろいろな体験を積み重ねて、スキルアップの機会を与え、自主的に成長欲求や、貢献欲求を満たしていくのです。

本記事は、月刊『理念と経営』2025年6月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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