企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論
現場力
2025年4月号
「四つの返報性」の 実践者を目指そう

対人関係能力はどの仕事でも重要です。単なる仲良しグループではなく、目標を実現してハイパフォーマー(高い成果をつくり出す人)になることで自己効力感が得られ、より多くの人に貢献できるのです。
「譲歩の返報性」とは譲り合いの精神
社長力、管理力で「好意の返報性」「敵意の返報性」「自己開示の返報性」について述べました。現場力では四つ目の返報性をお伝えします。
自己主張は大事です。テーマに沿ってチーム全員が侃々諤々と議論することはとても重要です。自分の意見を持つために知識を身につけ、哲学を持つ。ハイパフォーマーはそのことを大切にしているだけに、絶えず学び続けています。
一方、会議が硬直して、自己主張のみにとらわれる場合があります。中には「自分の意見が通らないのならここにいる理由がない」と席を立とうとする人もいるかもしれません。こういうとき、「譲歩の返報性」の原理が大事になってきます。
注意しなければならないのは、あくまでも目標実現のために活用するということです。いつ、どのタイミングで、譲歩してベストの答えを出していくかは、とても大事なことです。譲歩は対人関係をスムーズにする重要なスキルです。
さらに、「譲歩の返報性」は、会議の間中、発言もせず、討議に参加しない無関心さとは全く違うということです。ドラッカー博士は「そういう人は会議に参加する資格はなく、関心のある者だけで行いなさい」と述べています。
「譲歩の返報性」とは相手や目的実現のために、自分の意見を譲歩することです。すると、反駁し合っていた相手が、心理的に「自分も相手の譲歩に応えなければ」と感じて譲歩し合い、結果として目的・目標の具体策が生まれます。
共感性の高さが対人関係能力を磨く
「譲歩の返報性」には、相手の情報を知ることが大切です。「あの人はこういう人だ」という固定観念を捨てなければ、相手に対する共感は生まれません。
営業の場で高いパフォーマンスを上げる人は、お客様の視点、チームの視点、リーダーの視点、お客様の困りごとの解決者としての視点、マーケターの視点を持っています。
そういうスキルを磨いたら、敵意以外の三つの返報性の原理を働かせるのです。相手が言い訳や問題からの逃げ道をつくっているとしたら、まず、一度譲歩するのです。すると、あなたが譲歩してくれた分、次に相手は「自分が譲歩しよう」という心理になります。
当然、あなたの提案が正しいときに限ります。商品知識が少なかったり、自社商品の品質が悪かったり、相手が問題解決から目を背けていたりするときに譲歩すれば、それは相手の言い訳や逃げ道を応援したことになります。
ビジネスには誠実さや健全性が求められます。すなわち、あなたは、商品を通しお客様の問題を解決する立場にいることを忘れてはなりません。それは譲歩ではなく、あなたのスキルが弱い、あるいは、売ればいいんだという安易な気持ちが強いからなのです。
「譲歩の返報性」とは、テクニックではありません。相手のためを思って、あなたが譲歩した分、相手があなたのことを信頼して、あなたの意見に譲歩してくれるという心理的なものです。これらがテクニックになると、「譲歩の返報性」ではなく操作に近くなり、やがて対人関係は歪むことになります。
本記事は、月刊『理念と経営』2025年4月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。
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