企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

感謝力はあくなき挑戦の源泉です

コロナ禍で売り上げが下がったとき、多くの社長や幹部は給与カットを自らに課したはずです。理由は社会や現場の人を守るためです。受けた恩恵に強く気づいているからこそ、社長は働いています。事業経営とは、感謝力を総動員して社会からの恩恵に報いることです。

受けた恩恵に気づく力が感謝力です

 「感謝」の反対語は「当然」、あるいは「当たり前」です。人間は生存のための本能を持ち、リスクと感じた瞬間に攻撃・逃避の二つの衝動的な行動をとります。そのときは本能としての爬虫類脳(脳幹=脳の最も原始的な部分)が働きます。同時にこれらに気づき、ネガティブな衝動・行動をマネジメントする力が現場力です。感謝力を発揮する場面です。

 上司の多くが平然と何の悩みもないような表情をしていますが、彼らも人間です。時には心の乱れも生じて、あなたを叱ることがあるでしょう。感謝力の発揮を妨げているのが本能を司る爬虫類脳です。誰もが、自己を防御します。

 少しずつ脳が進化していくと、感情を司る哺乳類脳(大脳辺縁系)との二つを持つようになります。さらに自分らしい方法で物事を判断する人間脳(大脳新皮質)が働くようになって、現在、人類の進化とともに、われわれはいろいろな脳機能を持ったホモ・サピエンスとして生きているのです。

こう考えてみると、感謝力の強い人は決してうぬぼれません。①「仕事」が自分の才能にうまく適合していたと解釈し、仕事そのものに感謝します。②そこまで自分の能力を導き出してくれた上司や、子ども時代の両親や恩師に感謝し、③その才能が花開くまで忍耐強く支えてくれた人々に感謝し、④理不尽だと思っていた過去の体験にすら感謝します。

 当然、自らの努力と熱意があって苦しみを乗り越えたのです。しかし、感謝力の強い人はこれらの四つの感覚を持っています。多くの人は感謝力が引き出されていないだけなのです。

一流のプロを支える、感謝力を超えた謝罪力

 NHKの『プロフェッショナル』で、安福和弘さんという偉大な医師の姿が流れました。なぜ、このドクターは偉大なのか? 感謝力が強いからです。感謝力を超えて謝罪力ともいえます。

 安福医師が、先輩執刀医の助手として手術台に立ったときのことです。開胸すると肺がんが予想以上に進行しており、執刀医は「これは手術できない」と断じます。安福医師は、まだ可能性があるのではないかと思いながらも、仕方なくその指示に従い、胸を閉じます。その患者は一年後に亡くなってしまうのです。

 遺族に臨終を告げたとき、「家族が涙を流す診療をしないでください」と言われます。先輩の助手だったとはいえ、この言葉が残り、「謝罪」の思いから、診療で悔いが残らない医師になると決意します。人間にとって、感謝力はあくなき挑戦の源泉です。

 以下は、安福医師の〝ある一日〟です。いかに安福医師が感謝力に支えられて仕事に取り組んでいるかが、うかがえます。

 まず、カナダのトロント病院に出勤後、手術を行い、その後、患者の負担をより減らすための機械を生み出す研究開発を行います。深夜の一時から七時まで両肺の移植手術を行い、その後、朝の検診と、超ハードなスケジュールです。

本記事は、月刊『理念と経営』2024年12月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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