企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

置かれた場所で咲きなさい

海外でも日本酒ブームがあるようです。その先陣を切ったのが、旭酒造の「獺祭」という日本酒です。酒造りに欠かせない杜氏が辞めてからも、現場の方々が伝統技術を研究分析しデータ化し、大吟醸「獺祭」のおいしさを生み出しました。

一年三六五日、酒造りが可能に

  人生においても、仕事においても、逆境や試練というものに必ずぶつかるときがきます。そして、その試練を乗り越えた時こそ、実際に「生きていることの実感」や「仕事の喜びを体験」することができるのです。

 旭酒造の桜井会長は、まだ三〇代でトップリーダーに就任したときも、獺祭という商品を開発するときも、獺祭をヒットさせたときも、日本市場の限界を感じて海外に出て成功を収めるまで、絶えず試練や逆境を乗り越えてこられました。

 とくに、肝心の酒の造り方を熟知している杜氏に辞められたときは、ずいぶん不安だったと思います。日本酒は仕込みから発酵させて商品として完成させていく過程で、微妙に「勘」を働かせなければなりません。温度管理も含めて豊富な「経験知」が求められます。

 しかし、肝心の杜氏が辞めたその時に活躍したのが現場の方々でした。伝統技術を徹底して分析し、日本酒が出来上がるまでのプロセスを調べ、それをデータ化して、機械化やデジタル化も含めて一連の丁寧な作業工程を経て、今までにないおいしい日本酒を造り出したのです。

 従来の酒造りは、杜氏のスケジュールに合わせて季節が決まっていました。しかし、桜井会長の判断と現場の努力により、一年三六五日の酒造りが可能になったのです。まさに社長・幹部・現場が一体となって獺祭が誕生しました。

 現場力とは、おいしい酒造りのゴールを目指す力であり、会社の経営危機に挑む力であり、社長・幹部・現場が三位一体となって経営に参画する力のことです



本当に「今さえよければいい」のか?

 現場を担うあなたは、「今の業務スキル」のレベルに満足していますか。それとも、もっと高いスキルを身につけてお客様のお困りごとや問題解決に貢献したいですか。あるいはお客様が持っている「夢や希望」を叶えるため、もっと自己成長したいという「欲求」をお持ちですか。そのために未来設計をしていますか―。

 未来の自分の姿や年齢を考えて、自分がどういう生き方をしたいか、明確な目標が必要です。

 旭酒造が新しいお酒を造ったのは、現場の方々が向上心や探求心を持って挑んでいったことも成功要因です。今以上のスキルを身につけたい、おいしいお酒を造り出してお客様に貢献したいという夢があったからです。現場力とは、未来に理想や目標を持って挑み、実力を蓄えてより自らの才能を磨くことです。

 日本はOJT(仕事を通した教育訓練)やOFF・JT(仕事を離れた教育訓練)にかける費用が、対GDP(国内総生産)で日米比較すると、アメリカの約二〇分の一といわれます。自主的に学ぶという考えや価値観が、今の日本は薄れているように思われます。

 どの会社もいろいろな経営課題が山積みです。ある意味、クライシス(危機的)状態だと言ってもいいでしょう。自己成長欲求の弱い人が多く、もっとお客様に貢献したいという気持ちが希薄になり、「今さえよければいい」「自分さえよければいい」「ここさえよければいい」という、三つの価値観が横行しているようですが、そういう発想では会社もそこで働く現場も決してうまくいきません。



本記事は、月刊『理念と経営』2024年1月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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