企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

後継者として名乗り出る夢を持とう

現場力は、自己成長意欲と貢献意欲が求められます。株式会社冒険王の堀岡宏至社長は事業を承継する気持ちはなく、大手の医療用ソフト会社の現場で熱心にスキルを磨き、無意識に準備していたのです。チャンスは準備した者だけが手に入れるものです。

人の成長に欠かせない適度なストレス

 テレビ番組で「重力と無重力状態」について、宇宙飛行士の野口聡一さんのコメントや、宇宙社会学の研究者や医学者の話、水中にいる体長一㍉の線虫の行動実験を紹介していました。

 野口さんが「無重力状態が続くとやる気を失っていく」と述べていました。「快適な気分になり、軽自動車を宇宙では片手でつかんで簡単に動かすことができる。宇宙から地球に戻ると、自分の能力感覚が少し喪失した感覚がある」とも述べています。推測ですが「自己効力感」が低くなったのではと思いました。私なりの解釈でお伝えします。

 重力状態では無意識のうちに人間は適度なストレスを感じ、それが「人のやる気」を生み出していると想像します。一定の緊張状態は自律神経の交感神経を作動させ、ストレスに対してコルチゾールやアドレナリンというホルモンが放出されます。人体を意図して活性化させ、血圧を上昇させ、闘争して撃退するか、逃避して身を守るかの判断をするためです。しかし、緊張状態が過度になると他の機能に悪い影響を与えます。

 ストレスホルモンのコルチゾールなども、減少し過ぎると悪影響を与え、人体はあらゆる点で、中国古典でいう「中庸」の状態、アリストテレスの思想である「メソテース(中庸)」の状態を想起させます。

 重力状態では「線虫」が盛んに動き合っていますが、無重力状態だと動かなくなります。つまり、やる気を失うが、何かに触れさせると再び動く、これは「やる気ホルモン・快楽ホルモンともいわれるドーパミンが放出されているからである」と医学者は述べていました。重力を適度な緊張状態とし、無重力状態を緊張ゼロとした場合、人間の成長には何らかの課題や問題が適度に必要だと言えるのかもしれません。



幸田露伴は「努力」を二種類に分けている


 堀岡社長は、人の見えないところで努力できる力を養ったようです。まさに現場力です。研究開発などの現場は、いつ答えが出るかわからないことに必死になって取り組み、おそらく帰社してからも研究過程で絶えず「探求」していたのでしょう。それぞれの現場は、業界特有の陋習に縛られながら、必死に闘っていると思います。

 埼玉県に本社を置く物流企業の関根エンタープライズグループは、東日本大震災の折に大活躍しました。物流関係者が力を合わせ全国から救援物資を埼玉に集めトラックで運びました。

 福島原発事故の夜、幹部の小山剛さんはハンドルを握りながら迷っていました。埼玉の本社に戻るべきか、あるいは目的地の仙台まで進むべきか途方にくれていました。しかし、ボランティア仲間の「前へ進もう!」の一言で、あえて命懸けで仙台に向けてアクセルを踏んだのです。

 人生には予期せぬことが起こり、窮地に追い込まれることがあります。明治の文豪・幸田露伴は努力を二種類に分けています。一つは、多くの会社を訪問して立派な成果が出た、これは「直接の努力」です。しかし、コツコツと足繁く訪問したり、電話をしたり、小まめにお礼状や季節の挨拶状を書いて地道に信用をつくりあげる「間接の努力」が、実は大きな「人生のトレーニング」になると述べています。間接の努力は人の目には見えませんが、間接の努力の積み重ねが大きな成果になるのです。


本記事は、月刊『理念と経営』2023年12月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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