企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

自らが会社のモデルとなり、尊敬の対象になろう

人や社会に対する感謝力は、小さい頃から「畏敬の対象」を持つことから始まります。現場力とは、元気で仕事ができることへの感謝であり、お客様に対する感謝、職場の仲間に対する感謝です。そして究極は、両親や恩師に対する「畏敬の念」です。

本来は会社の仕事は自分の人生の一部

 私はスタンフォード大学の客員研究員時代、ヒューレット・パッカード(HP)の人材育成システムに驚きました。ホームページに多くの教育カリキュラムがあり、それを自由意志で学べる仕組みになっていました。ただ、結果をつくるという「義務」は全員承知の上です。ベースに「尊敬」と「信頼」があり、当時のアメリカでも敬われる企業の一つでした。

 経営を担う社長・幹部も、現場の社員を尊敬し、信頼し、逆に「尊敬と信頼」を得られるような仕事の結果をつくるべきだと思います。「三位一体経営」は、自立性を持った現場力の自己成長欲求と貢献欲求によってスタートします。また、社長も、経営幹部も、未来の日本の国の宝である若い後進のために、襟を正して勉強すべきであり、不可能だとしても、モデル(お手本)になるべく自分を修める力の発揮が求められています。

 現場力とは、企業の命運を左右するマネジャーの指示の意味合いを理解し、効果的で効率的な組織マネジメントの一助になる力のことです。

 働き方改革で、間違いなく「働きやすく」なっています。現場力とは「働きやすくなった分」の余力を、「自己成長のために活用」する能力のことです。本来の自分の才能を磨き、スキルを高めることが自分の人生に責任をとる姿勢です。

 富士フイルムホールディングス元社長の古森重隆氏は、仕事の本質を次のように述べておられます。「本来は会社の仕事は、自分の人生の一部である。それもかなり大部分なのだ。ところが、会社や仕事を自分がどうしたいかを己の頭で考えようとせず、人任せにしている人がいかに多いことか。それは会社のためにもならず、自分のためにもならない態度である」。その原因は「敬の対象とする」人がいないことによるものです。



現場時代に己を鍛えておく必要がある

 古森重隆氏が富士フイルムに入社した年は、八六人の大卒新入社員がいたそうです。優れ者と鳴り物入りで入社した人もいましたが、五、六年もすると、実力を発揮した人とそれほどでもない人に分かれました。優れ者で評価が高い人でも、「何事からでも学ぶ」という姿勢のない人は、結局平凡な評価しか受けなかったとも述べられています。

 『ピーターの法則』(ローレンス・J・ピーター、レイモンド・ハル共著、渡辺伸也訳、ダイヤモンド社)は、わかりやすくいえば、「人は昇進すると無能になる」と主張しています。現場力とは「昇進」してからも学び続ける力であり、「昇進」した後も正念場としてトライし続ける力です。だからこそわれわれは、現場時代に己を鍛えておく必要があるのです。昇進の意味は自分の才能の発揮を試すためにあるのです。

 第一に、「能力主義の階層社会では、人間は能力の極限まで出世する。したがって、有能な平社員は無能な中間管理職になる」。つまり、平社員のときに持っていたスキルで役に立っても、マネジャーになると通用しなくなるのです。スキルアップしないと無能になるわけです。

 第二に、時が経つにつれて人間はみな出世していきます。無能な平社員は、平社員のままです。しかし、有能な平社員は無能なマネジャーの地位になって、そこに落ち着くわけです。すると、全階層において無能な人間ばかりになるのです。

本記事は、月刊『理念と経営』2023年10月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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