企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

一人とて首を切ることは許さん

大切なことは人に教えを請うことです。お客様に尋ね同僚や上司や部下にも質問します。ただし、安易に教えを請う態度では学べません。自分で真剣に考えて、前向きに挑まなければ、教えを自分のものにできません。

社員稼業―依存心が人生を駄目にする

 「事業は人なり」とは、〝経営の神様〟といわれた松下幸之助翁の哲学であり、企業経営の成功法則です。とくに松下経営哲学には「社員稼業」というものがあります。どの経営者よりも「働く人たちを活かす経営」「自主自立を持った人材の育成」を深く考えられた結果の言葉です。

 組織になじむと、ややそれぞれが依存心を持つようになります。無意識にサラリーマン的になりやすく、与えられた仕事を無難にこなせばよいといった、従属的な発想になってしまう場合があります。

 自分の部署においては「その部署の主人公」であり、その「部署の経営者」である。そういう心意気で仕事に取り組めば、おのずから自分の才能が発揮され、仕事の歓びが生まれ、つらいことも乗り越え、自分の部署が活気にあふれることで、さらなるやりがいも生まれてくるのです。

 つまり、一人の社員さんは組織の最小単位ですが、そうではなく一人ひとりが責任者意識を持ち、自分はこの事業部の経営者なのだという自覚に立てば、社員さん自身のためにもなり、ひいては社会の一員として立派な人生を送れるようになる。そういう考えに達し啓蒙したのです。

 〝経営の神様〟といわれる松下幸之助翁は、満九二歳のときにPHP研究所から出した『私の行き方考え方 わが半生の記録』という本の中で、次のように語っておられます。



体験・経験・実行から学んだ松下幸之助翁

 「明治二十七年に和歌山県で生まれた私は、九歳のとき大阪に奉公に出てきた。それから八十三年、実にさまざまな人や出来事に出会い、いろいろなことを学ばせていただいた。健康の面でも、学問の才能の面でも、人より決して恵まれているとは思えない私が、今日、ここにこうしてあるということは、ひとえにそうした多くの方々、さまざまな出来事に導かれ、励まされてのことであり、いまはただすべてに感謝したい気持ちでいっぱいである」

 この短い言葉に対して現場を担う皆さんは何を感じますか。若い頃肺尖カタル(一種の結核で当時は不治の病といわれた)を患い、医者から、とても五〇歳まではもつまいと言われるほど体が弱かった。家族のほとんどを同じ病気で失い天涯孤独同然だったのです。生活も貧しく、そのおかげで小学校四年での中退です。

 しかし、貧しい人が貧しいままではなく、お金持ちがそのままお金持ちで終わる保証はありません。「自らの努力で困難を開拓し得た境地には、金銭に代え難い人生の味わいがある」と、人間としての深いお気持ちを述べておられます。試練を、熱意と知恵と努力で克服されたのです。

 現場には「人間力・考える力・仕事力・感謝力」を鍛錬する多くの手段が存在します。九歳から多くの体験をされながら八三年後に、ご自分の生涯を謙虚に語り、「いまはただすべてに感謝したい」と述べられるのは、感謝力の強い人生を生きられた証しです。われわれも現場の一員として、すべてを未来のための体験として捉え、松下経営哲学から学んでいきましょう。混迷は、突破するために現れてくるのです。

本記事は、月刊『理念と経営』2023年9月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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