企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

向上心さえあれば、 自ら求むる以上の福音がある

人が主役の「人」は、「企業の永続に必要な人的資本」という意味です。企業は働く人の成長の機会を設け、現場の人は本来の自分の才能を磨き、好奇心を持って自己成長欲求を満たし、仕事を通して社会貢献を果たしていくことが大切です。

シリコンバレーに集まってきた人たち

 若い起業家生をアメリカのシリコンバレーに案内して、スタンフォード大学の広々とした雰囲気に触れるたびに、「こういう環境で学べば誰もが立派な人間になるはずだな」と感じます。

 私はダニエル・オキモト現スタンフォード大学名誉教授のお計らいで、一九九八(平成10)年から二年間スタンフォード大学で学びました。アメリカの素晴らしいところは、その人の持つ強いスキルを称賛することです。研究の傍ら、私は「スシ・マスター」として、ノーベル賞授賞教授も参加されるホームパーティーなどに、三顧の礼で迎えられました。

 私が現場の人に伝えたいのは、「生きる上でお金、学歴、地位、名誉はいらない。向上心、知的好奇心、努力、熱意さえあれば、時間はかかるが、自らが求むるもの以上の福音がある」ということです。

 シリコンバレーの現場は、起業家精神にあふれ、誰もが主体的です。欲望、ビジョン、エキサイティング、タフ、クレイジーと、その成功のプロセスが理解できます。もちろん、資金集めまで苦労の連続ですが、それらのストレスをものともしません。日本には補助金に頼る傾向がありますが、シリコンバレーの成功企業の創業者たちはそういうことを嫌がります。シリコンバレーの「トシ鮨」でよく見かけたスティーブ・ジョブズ氏も、年一ドルの報酬でアップル再生に臨んでいました。

創造性を発揮して模範解答に縛られない

 人が主役のマネジメントでいう「人」とは、主体性を持って任務を行う志の高い人たちです。決まり文句の模範解答で片付けることを避けます。模範解答は人を育てません。独創性を奪う一種の言い訳になります。

 管理力で「ピラミッド組織」の話をしました。人が主役のマネジメントでは、「権限」を意味するよりも、「機能」を強く意識したものです。トップの権限が異常に表面化した場合は、いずれかのマネジメントに問題が生じているときです。①組織の目的が共有化されていない、②協働の自発性が乏しい、③与えられたタスクをやり遂げるスキルや熱意の不足が、どこかの時点で齟齬を生み出しているはずです。

 ただ、トップかミドルの行き過ぎの場合もありますが、現場を担うロワーマネジメントの業務的意思決定が、組織の目的に逆行したり、企業文化を劣化させたり、やり方にミスが多い場合にも起きる状況です。

 特に現場と他のマネジメント同士の報告・連絡・相談・確認の齟齬は、不信感や、余分なミスを引き起こし、組織としては無能化現象となり、どのマネジメントも機能停止となってしまいます。

 つまり、経営陣であるトップマネジメントは、成果の最大化のために、戦略性や創造性の機能発揮が求められます。戦略的意思決定とは①ビジョンの決定、②実現のための未来投資計画、③経営革新、④新規事業への参入、⑤人材教育方針です。

 幹部であるマネジャーの役割は、意思決定をどう効果的に計画に移し、それを運営・運用していくかにあります。経営資源(人・情報・物・金)の運営・運用が最大の任務です。実行機能がこのミドルマネジメントです。どんなに素晴らしい「戦略的意思決定」を下しても、各方面に成果をつくるための運営・運用のマネジメントが機能しなければ、組織に乱れが生じてきます。一番振り回されるのが現場の社員さんたちです。

本記事は、月刊『理念と経営』2023年4月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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