企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

テクニックではなく基礎・基本が重要

大谷翔平選手は、努力、人柄、謙虚さ、生活態度、向上心、誠実、純粋さ、トレーニング、技術向上の読書、明確な目標設定、野球一筋の生き方など、現代人が忘れかけた「人としたの大切な価値観」を教えてくれています。現場力には基礎が必要不可欠です。

父との交換日誌「野球ノート」

 野球だけではなく人生も仕事も企業経営も、すべての物事には基礎が必要です。多様性もいいことですが、基礎のできていない人の多様性には、どこかにムラや自己正当化があり、大谷翔平選手のような一筋というイメージからは遠い気がします。
 一筋の独自性、磨かれた個性が集まってこそ、進化は生まれます。大谷翔平選手の人間としての基礎は両親によって育まれたものですが、特に父の徹さんとの交換日誌「野球ノート」は、幼い翔平少年の心に強く息づいたのだと思います。
 この野球ノートは、岩手県一関市の少年野球のコーチをしていた徹さんが、今日の試合の良かった点や反省点などを書かせていたものです。同じ過ちを繰り返さないように、次に何をすれば課題を克服できるか考えさせるためです。
 現場力とは、一日の体験や仕事の仕方を素直に振り返る、リフレクション(反省、内省)をする力のことです。すると、そこから改善案や新しい発想が生まれてきます。素直に振り返らない限り、アウェアネス(気づき)は生まれず、他人への責任転嫁や言い訳をつくります。「無知(認識の欠如)」は人生に壁をつくる最大の過ちです。
 徹さんが偉大なのは、翔平少年を気づきの多い人間に育てたことです。こう述べています。
 「大切なのは、悪かったときに次に何をすれば課題を克服できるのかを考えて行動に移すことだと思っていました。エラーや三振はある。その反省から自分がどういう取り組みをしていくのか。それらを字で書き残すことによって、しっかりとやるべきことを頭に入れてほしかった」

現場力に共通する三つの教え

 そして、ノートには三つの徹さんの言葉が書きこまれています。
 一つ目は「大きな声を出して元気よくプレーする」、二つ目は「キャッチボールを一生懸命に練習する」、三つ目は「一生懸命に走る」です。
「三つの教えは基本的なものですが、今でも覚えています。それは、いつどのステージに行っても言われ続けることだと思います。特に全力疾走は、そのこと自体に意味がありますけど、その取り組む姿勢にも大きな意味合いがあると思っています」
 この言葉は、大谷選手が二三歳のときに、スポーツライターの佐々木亨氏に語ったものです。具体的に日々実践しているのも大谷選手の強みです。
 「大谷翔平選手はプレーの質を落とさない事を最優先している。ささいなことでも決しておろそかにしない。自分が望むことを明確に意識し、それを実行に移す。そんな姿勢を心から称えたい」
 現場力とは、三つの教えに共通するものです。成果をつくったとしても喝来を浴びることは、われわれにはありません。しかし、一つ目の「大きな声を出して元気よくプレーする」とは、元気な挨拶に通じます。
 徹さんが「人生も野球もコミュニケーションを大切にすることがポイントだぞ。そういう人間になってほしい」と願ったように、現場力には、「共通の目的」「具体的目標」を共有して情報交換を緻密に行い、ボトルネックの徹底撲滅が要るのです。
 二つ目の「キャッチボールを一生懸命に練習する」とは、自分の業務の基礎や基本を繰り返し繰り返し一生懸命に習慣化することです。

本記事は、月刊『理念と経営』2022年11月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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