企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

ピアノを練習するのはモーツァルトになるためじゃない

自主自立度の高い現場力とは、目的・目標を明確に持った人たちが集まり、チーム活動を通してハタ(傍)を楽にし、お客様への「貢献」を実践している力のことです。つらいことがあってもあきらめず努力して、自主自立の精神をつかみ取るのです。

知床の観光船の事故を他人事にしてはいけない

 事故を起こした「知床遊覧船」の社長も、二〇〇五(平成17)年に起きたJR西日本の「福知山線脱線事故」をテレビか新聞で見ていたと思います。しかし、他人事として見ていたのでしょう。経営に対する安易な考え、弛緩し切った判断基準と意思決定を見ていると、こうした出来事を「他岐の砂」として学習していなかったことが推測されます。
 われわれもこの知床の事故を他人事としてはなりません。明日はわが身という共通認識が求められます。
ペンシルベニア大学のアンジェラ・ダックワース教授は自著『GR-Tやり抜く力』で、フットボールのスティーブ・ヤング選手を事例に取り上げています。ヤング選手は伝説のクォーターバックで、プロの世界で数々の偉大な業績を選した選手です。
 ヤング選手は高校でスター選手となり、全米の大学から誘いを受け、八番手のクォーターバックとしてブリガム・ヤング大学に進学しました。ところが、同じポジションを狙う七名の選手がいて、試合に出られないどころか、出来の悪い選手の集まりに加えられ、他の選手の練習相手として使われる羽目になります。
 前期は大学に通っていたそうですが、いつでもやめられるように荷造りをしていたそうです。スター選手から練習用選手になったことは衝撃でしょう。われわれの人生にも多かれ少なかれこういう場面は登場します。とうとう彼は父親に電話で事情を説明するのです。
 「父さん、こんなの最低だよ。こんなことがしたくて来たんじゃない。だから、家に帰りたいと思っているんだ」

自己責任で自助努力を求める国と日本

 ここからが日米の違いを強く感じるところです。アメリカは自己責任の社会であり、一八歳になって高校を卒業する年齢になると家から出される文化です。否応なく自立や自己責任を強いられるようです。しかし、日本はいくつになってもパラサイト(他者に依存して生きる人)で親が保護しようとし、子どもは無意識に依存する関係性が濃いようです。もちろん、日米とも例外があることは承知の上で述べています。
 ヤング選手の父はこう答えます。「やめたっていいさ。⋯⋯だが、家には帰ってくるな。意気地なしをこの家に住まわせるわけ
にはいかない。そんなことはおまえだって、子どものころからよくわかっているはずだ」
 甘えの構造と指摘されてきた日本の親や子どもたちが考えるべき発言です。この言葉でヤング選手はやめずに努力を始めるのです。誰よりも早く練習を始め、誰よりも遅くまで残り、自主練習のレベルも上げていきます。
 私がダックワース教授の「やり抜く力」を一つの支えにしていると言うと、日本ではひんしゅくを買いそうで勇気が要ります。
今の日本はかなり弛緩した方が評価を受けるような印象を持っています。昭和の遺物とレッテルを貼られそうです。

本記事は、月刊『理念と経営』2022年7月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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