企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

「無知」は人生にも仕事にも 壁をつくります

直接的に稼ぐ力は約八割が現場にあるともいわれます。生産性向上や働きがいを生み出し、それぞれの得意分野やベテラン社員の技術をモデリングし、オペレーションの変容で生産性向上に挑みませんか。

オペレーション次第で生産性は上がる

 現場力が中小企業経営の要です。職種によってオペレーションは異なりますが、利益を生み出すバリューチェーン(付加価値をつくりあげる価値の連鎖)は、現場によって支えられています。
 迅速な納品業務や、正確な受注業務、おもてなしの接遇など、現場力によって企業は支えられているのです。経営理念がいくら崇高でも、どんなに優れた経営方針書や事業計画があっても、現場の力なくしてお客様の満足は得られません。
 現在、岸田総理による政策の一つに「分配」があります。経済界全体の観点からも賃金アップは大切なことです。「賃金は高く、分配率は低く」が一つの理想だと思います。しかし、大企業の平均年間賃金が約四五二万円に対して、中小企業は約三九八万円というのが現状です。
 理由は中小企業の一人当たりの生産性が低いからです。労働生産性は製造業と非製造業に分かれていますが、大きくは変わりません。業種別に見ると、さらに違いが分かれます。平均値をとると一人当たりの生産性は五三四万円であり、そこから三九八万円の平均賃金を引くと、企業に残るのは一三六万円となり経営が苦しくなるのです。地代家賃ほか多くの固定費用を賄うには、岸田総理のいう「分配」政策に追いつけない企業も出てくるのです。
 われわれセミナーを行う講師は「自社製品や技術やサービスの付加価値を高めること」を推奨します。では、付加価値を高めるにはどうするか?私はナレッジ(知識)を道具として最大活用することを勧めています。ナレッジの使い方には知恵・気づき・熱意が必要で、事前準備を万端整えることが経営幹部に求められます。

暗黙知と形式知を組み合わせて学ぶ

 無知は人生にも仕事にも壁をつくります。常日頃の探求心不足や、知識不足がいざという時に壁となるのです。
 壁を打ち破るためには、一つは熱心に考えること、二つ目は知識が豊富な方に聞くこと、三つ目は自分で実践して結果をつくった人に尋ねることです。四つ目は、実際に道具を探すことです。注意点は安易に多額投資をせずに「デジタル化+自社変容」に
力を入れることです。
 そして、五つ目が大事です。現場にいる人の中から、技術の模範はこの人、営業の模範ならこの人と決めて、全員がその人が持つ技やノウハウを身につけることです。これを「モデリング」と呼びます。
 何度も何度もモデル(模範・見本)の行動・態度・考え方・取り組み姿勢などを観察しながら、モデルの技術を徐々に身につけていくのです。技術の中には、言葉では表現できない暗黙知があります。これは「五感に訴える暗黙知」と「言語で伝える形式知」を組み合わせることで、効率よく身につけることができます。その具体例が「ジョブ・ナレ」「ジョブ・ナビ」です。
 「ジョブ・ナビ」は、「ジョブ・ナビゲーション」です。仕事の本質や、自分の従事する仕事の有意義性を、スマートフォンなどで繰り返し学習し続けることで効果が出てくるという仮説です。
 アプリの動画を「見る・聴く・感じる」を繰り返し、実際に自らも行うことで脳が刺激され、意味の認知力が高まります。それまで受け身で行っていた業務の意味の大きさを理解・把握・自己認知し、やがて業務の貢献に魅せられ目覚めていくというものです。
 これらはスタンフォード大学のアルバート・バンデューラ教授が観察学習として研究・実験して唱えたものを、私なりの心理学や脳の発達過程の解釈でお伝えしています。何らかの実験をして検証したものではなく、あくまでも仮説です。しかし、長年行っている研修では、観察学習を理解し、実際に自社の企業経営の在り方や、対人関係・自分の生き方などに目覚め、立派な経営者として活躍されている事実も多くあります。

本記事は、月刊『理念と経営』2022年3月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

成功事例集の事例が豊富に掲載
詳しく読みたい方はこちら

詳細・購読はこちら

SNSでシェアする

無料メールマガジン

メールアドレスを登録していただくと、
定期的にメルマガ『理念と経営News』を配信いたします。

お問い合わせ

購読に関するお問い合わせなど、
お気軽にご連絡ください。