企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

君は「会社のため」に働いているか

「信用」が最大の現場力です。「できない」と思う心が邪魔してることに気づき、多少の無理難題でも会社の方針に基づいてやってみることです。そして忘れてならないのは恩義です。無理難題も恩と捉え、スキル向上の最大の機会にしましょう。

たゆまぬ努力がご縁をたぐり寄せる

 三人の社長と一人の幹部にご縁をいただき、窮狭の度ごとに救っていただきました。いま、実力以上のことができているのは三人の社長と原口登志寛さんという、素晴ら
しい上司に恵まれたおかげです。五三年前です。
 ご縁とは、たゆまず努力を積み上げて得られるものです。一つは、キリストの山上の垂訓にある通りです。
 「求めよ、さらば与えられん。尋ねよ、さらば見出さん。門を叩け、さらば開かれん。すべて求むる者は得、尋ぬる者は見出し、門を叩く者は開かるる」
 この熱意が要るのです。
 富士フイルムホールディングスの古森重隆元CEOは、「伸び続ける人」と「停滞する人」を、次のように比較しています。「『自分のため』ではなく、『会社のため』という意識で仕事をする人は伸びる。いわゆるオーナーシップを持てるかどうかだ。自分は会社に貢献しているかどうか、常に自分に問いかけなければいけない」(古森重隆著『君は、どう生きるのか』三笠書房)
 古森氏は自社の経営革新を猛スピードでやり遂げられましたが、自分が選んだ職場に全力で尽くした方です。それは自分の哲学であると同時に、自分の提案等を受け入れて導いてくれた、先人への恩返しだったのだと思います。

三〇〇〇万円を新聞にくるんで渡してくれた

 藤原一郎社長の応援を受け、私は一九七〇(昭和45)年、店をオープンしました。決して好立地とはいえない場所です。しかし、画用紙にキャッチコピーを書いて毎晩貼り歩き、手紙を書いては表札の前で封筒に名前を書いて郵便受けに入れて回りました。
 繁盛しました。一日三万円で返済が可能でしたが、四〇万円、四五万円の売り上げです。しかし、うれしいと同時に、懸念してい問題が生じてきました。藤原社長の「ごんた鮨」のお客様が、車で店にお見えになるのです。特に最大顧客の方は運転手付きで家族やお客様とご一緒にお見えになります。これは藤原社長からご恩を受けている私にとって、絶対に避けなければならぬことです。ごんた鮨の大切な常連顧客を奪うわけにはいきません。訪問して丁寧にお願いし、ご来店のお断りをして回りました。
 忘れてはならぬのは恩義、捨ててはならぬものは義理、お金で買えぬものは信用。恨んでいた父親の考えや口癖が、いつの間にか体に染みついていたのだと思います。
 長い間、藤原社長との関係性は良好でした。共通の悩みは人の定着の問題です。社長のご自宅で、二人で明け方近くまで話し合ったこともあります。最も大きな恩義は、起業支援と初めて土地を購入するときでした。
 兵庫県西宮市の苦楽園口という駅前に、二七坪で一坪四〇〇万の土地購入を決めましたが、銀行の返事が遅く、望んだ借入金も三〇〇〇万円ほど不足の状況でした。いつものように藤原社長のご自宅に行くと、「今日はあまり元気がないな⋯⋯」とおっしゃられました。正直にそのことをお伝えすると、「明日おいで、話し合おう」と言ってくださいました。
 そして、翌日訪問すると、困っていた三〇〇〇万円を、一〇〇〇万円ずつ束にして三つ、新聞紙にまとめて紐できちんと結び、「これ使い!」と渡してくださったのです。縁ありて花ひらき恩ありて実を結ぶー予期せぬ体験です。借用証書もなく、ドル箱になる苦楽園の店がオープンしました。

本記事は、月刊『理念と経営』2022年2月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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