企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

社員一人ひとりが経営意識を持った企業ほど強いものはない

現場力とは、お客様のお困りごとや喜びに敏感になる力です。困難の中で自らの人間性を鍛え、自分が成長した分しか貢献できません。デジタルとアナログの両面を強化して、効果的で効率的な「ハイブリッド型」の提案をしてください。

デジタル社会とは何かに関心を持とう

  多くの現場がコロナ問題で難儀していますが、これを逆手に取って飛躍している企業もあります。九店舗を展開する、ある小売業は二〇二〇(令和2)年の四、五、六月の売り上げを前年比で大きく下げました。しか
し、ある店舗は他店と違い、売り上げを三〇勢も増やしたのです。
私はこの会社の経営方針のお手伝いを月に一度だけ行っていますが、ある診断手法で、お客様の声を九店舗同時に分析しました。コロナ問題が発生する数カ月前です。売り上げ三〇ぎアップだった店舗は抜群の現場力の高さで業績がよいのです。二店舗はお客様の評価はよくありません。結果的に落ち込んでいます。
つまり、三〇努アップの店は同じ商品を販売していながら、常日頃の接遇やサービス、おもてなしが、他店よりも勝っていたのです。結果として新型コロナウイルスの問題が起きても、この店舗だけは売り上げを
伸ばすことができ、七月は前年の二倍の売り上げをつくりました。その後、全店舗の改革にすぐに着手したこの会社は、コロナ下で創業以来最高益を出します。
もう一社の事例は木材業の会社です。自社の顧客は一体誰なのかが不明で、ビジネスセミナー受講後それを明確にしました。ターゲット顧客を絞り、革新に着手しましたが、すでに在庫が倉庫に山のように積まれていました。
そこに、現場の社員さんがインターネットで販売することを提案したのです。同社のA社長は「木材がネットで売れるわけはない」と思っていましたが、「じゃ、一度試してみたら」と、当てにしないで任せたので
す。すると、最初の月の売り上げは三〇万円でしたが、翌月には一〇〇万になり、倍々で上がっていきました。三年間苦労して仕組みをつくり、今では業界でモデルになっているほどです。
特に、コロナ問題が浮上した昨年四、五、六月はネット販売開始前の四倍の売り上げです。九月にはホームセンターへの卸が四倍、ネット販売での売り上げが二倍半になっています。現場の着想と、その声を受け入れた社長の英断です。まさに、「社員さんにも経営意識を持たせた」結果です。A社長は人財育成では相当苦労していましたが、今では社員さんが積極的に、さらに学ぶようになっています。

「ハイブリッド経営」を唱える冨山和彦氏

  DX(デジタルトランスフォーメーション)時代は、一九九五(平成7)年、すでにアマゾンがウェブ通販のシステムを構築したときから始まっています。現在、一億数千万の商品アイテムを持ち、その社名の由来の通り、AからZまで世界のすべての商品を扱う計画なのです。
世界一の売り上げを誇るアメリカのスーパーマーケットチェーン、ウォルマートを脅がし、インターネットなどデジタルを戦略的に活用して、次々に百貨店や専門店を駆逐しています。多い年には一〇〇〇店舗近くが閉店に追い込まれ、かつての有名百貨店や有名専門店が米連邦破産法一一条の申請をしているのです。
政府はデジタル庁をつくっていますが、企業側が重要なのはDXの「D」(デジタル)ではなく、「X」(変革・変容)です。簡単にITを導入すればうまくいくものでもありません。政府の一〇万円の給付金の遅れや、大手金融機関ですら、ホストコンピューターのシステム障害を時折引き起こしています。高額なデジタル機器やソフトで解決できるという安易な考えは、中小企業には危険です。これらもソフトだけの問題ではなく、システムやそれを運用する「人財」の問題も大きいのです。常に社員さんにも経営意識を持たせる社員教育の充実が重要なのです。
産業再生機構などで活躍された富山和彦氏は、安易にDメだけに偏ることなく、かつアナログだけで通用する時代でもないことを、われわれ中小企業に伝えています。ちなみに、働き方改革の後でも、「経営者は三六五日、二四時間働く」ように警告を発しておられます。


本記事は、月刊『理念と経営』2021年2号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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