企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

DX時代は、まさに現場力の発揮が求められます

勉強するのは一瞬の苦しみです。しかし、勉強しなかった苦しみは孫子の代まで続くのです。福沢諭吉翁は「年をとって無学であることの不自由は、苦学の苦労よりもさらにつらい」と述べています。未来のために“根気の努力”をしてみませんか。

才能よりも根気の努力に分がある

  福沢諭吉翁がさまざまな場所で語った話を取りまとめた『福日話』は実に示唆に富んだ人間の生き方を教えてくれます。苦学という言葉は日本では死語となりました。舗吉翁は『学問のすつめ』で、すべての不幸の要因は学問の有無にあると述べています。
  世界の歴史に残る生き方をした人たちは、多くが苦学して、先が見えないながら努力して光を見いだしました。ここで言う学問とは、単に教科書で学ぶという意味ではなく、思索・学問・実践の繰り返しの中から道を拓くという意味です。迷う・悩む・惑うことは決して悪いことではありません。現実と理想とのギャップが無意識に働いた結果起きている心理状態なのです。
  思うようにいかないときにやけを起こす、快楽に逃げる、あるいはその反対に、理想に向けて挑むなど、人生の差を決める理由はさほど多くはないのです。『福翁百話』の九一話は、「才能よりも根気の努力に分がある」と訴えています。
  現在、日本は経営陣の慢心や政治の空白で、失われた二〇年とも三〇年ともいわれています。また新型コロナウイルス問題だけではなく、中堅中小企業は深刻なDX(デジタル・トランスフォーメーション)の遅れという問題を抱えています。このことは日本の国際競争力をさらに悪化させる状況をもたらし、中堅中小企業は生存の危機さえはらんでいるのです。
  もちろん、現場の皆さんに原因があるのではなく、経営陣の油断や、国家百年の計たるものを喪失した、国の指導者たちの責任です。しかし、江戸末期に黒船が来航して慌てふためいたように、DXの遅れが、日本企業の立ち位置を揺るがしているのです。そこで、皆さんにデジタルシフトへの「根気の努力」のお願いとして、述べさせていただいています。

ここで停滞すれば自分の首を絞める

   日本は七五年前に先の大戦で敗れ、塗炭の苦しみを国民は舐めました。ドイツやイタリアは戦後補償を解決していますが、日本はようやく超党派の国会議員連盟の総会が今年三月に開かれました。しかし、結論は定かではありません。イデオロギーではなく、財政が最悪の中でも決着したイタリアと比較して、なぜ日本はここまで遅れるのでしょう。
  多くの犠牲にもかかわらず、いち早く戦後復興を成し遂げられたのは、時の政権の緻密な政策と国民の必死の勤勉さのおかげです。つまり、菅総理のデジタル促進の政策は、政治だけでも経済界だけでも進みません。DCX(デジタル・カスタマー・エクスペリエンス=デジタルを介しての顧客体験)が求められる時代を乗り越えるには、民間にも大きな責任があるのです。
  特に、口CXに関しては社長や経営幹部はもとより、現場の力が一番重要です。社長力・管理力・現場力の三位一体経営は、現場が大きな鍵を握っているからです。
  いち早く日本が世界と肩を並べるには、IT・IOT・AIなどを駆使したビジネスモデルの構築を急がなければなりません。ここで停滞していたら、自分で自分の首を絞めることになるのです。「今さら何を言うんだ。自分たちにも心の準備が要る」と言いたくなる気持ちはわかります。間違いなく、政治の怠慢、産業界の慢心であり、現場に罪はありません。
  しかし、勉強するのは一瞬の苦しみですが、勉強しなかった苦しみは生涯続き、次世代にまでその苦しみのツケを残すのです。福沢諭吉翁は時代を見据え、得意のオランダ語は適用しないと先を読み、英語に素早く切り替えました。われわれも努しませんか。

本記事は、月刊『理念と経営』2020年12月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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