企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

今までの成功と同じことを続けていれば、失敗する

「世界に先駆けてニュートリノ(中性微子)を捉えるのだ」の言葉に現場が燃えました。小柴昌俊先生たちの夢を意気に感じ、現場が奮い立ったのです。イノベーションはすべての人間を燃え立たせるものです。

現場こそが、不可能を可能にできる

  社長力・管理力で、浜松ホトニクス㈱という世界でも屈指の「光電予増借管」技術で有名な会社について述べました。当時社長をされていた晝馬輝夫さんが、後にノーベル賞を受賞される小柴昌俊先生たちに頼まれて、直径二五インチ(約64m)の光電子増倍管に挑んだエピソードです。
 当時の浜松ホトニクス㈱の技術レベルでは到底無理なものでした。頼まれた二五インチの製品を断るつもりで、東京大学の小柴教授室に向かいますが、「研究室の壁に掛けてある宗教画を見て、この人は神のみぞ知る絶対真理を追い求める人だ」(『人間発見私の経営哲学』日経ビジネス人文庫)と感じます。そして「日本のために大きな夢に挑む小柴先生に協力してみよう」という気づきが生まれたのです。
 多分、この直観的な内的促し(気づき)がなければ、不可能なものへのチャレンジ精神は生まれなかったと思います。直径二五インチの管をつくるという難題に対して、晝馬さんの「人類未知・未踏の領域の追求」
という信条が挑戦を決意する瞬間です。
 経営者にも、経営幹部にも、現場の人たちにも、それぞれの条件があります。共通するのは「貢献に対するコミットメントは、責任をもって成果をあげることに対するコミットメントである。このコミットメントなくしては、人間は自らをごまかし、組織を壊し、ともに働く人たちを欺くことになる」(P・F・ドラッカー/上田惇生訳『新訳経営者の条件』ダイヤモンド社)、まさに、晝馬さんは、この経営者としての条件を深く自己認識していたのです。

志に奮い立った現場の人たち

  会社に帰ってから現場の技術者を集め、不可能と思われるものに挑むことを伝えます。「日本の研究は欧米に数年は遅れている。遅れを取り戻すには光電子増倍管を大きくして、微弱な光を一度にたくさん受けるしかない」(『人間発見私の経営哲学』日いビジネス人文庫)という小柴先生たち困難と夢を伝えます。現場に拒否されることも覚悟していました。
 ところが、この難しい「二五インチ」の受注を聞いた技術者や社員は、反対するどころか、「世界に先駆けてニュートリノを捕らえるのだ」という、小柴先生たちの夢を意気に感じ、奮い立ったのです。イノベーションはすべての人間を燃え立たせるのです。
 晝馬輝夫さんは「私が報奨金を出すからと言っても、技術者たちは決して燃えなかったでしょう」(同書)と述べています。本来、人間は人や社会に貢献する生き物なのです。
 現場力とは難しい事柄にも挑む力であり、自らの能力に気づき、貢献する露びに気づき、不可能を可能にしたいと望む力のことです。中小企業のイノベーションは現場の人たちの手中にあるのです。
 「エグゼクティブに最もよくみられる失敗の原因は、新しい地位の要求するものに応えて、自ら変化していく能力や意思の欠如である。それまで成功してきたのと同じことを続けていたのでは、失敗する運命にある。(中略)このことを理解できずに、以前の職務において正しかった仕事を以前のような方法で続けるならば、新しい職務では、ただちに間違った仕事を間違った方法で行うことになってしまう」(P・F・ドラッカー/上田惇生訳『新訳 経営者の条件』ダイヤモンド社)
 現在、新型コロナウイルス問題で日本のデジタル社会の遅れが取り沙汰されています。菅総理はデジタル庁創設を決定されましたが、今までは産業政策の舵取りの過ちなのか、日本の経済を担う経済人の読みの甘さなのかはわかりませんが、ドラッカー博士が述べているように、「それまで成功してきたのと同じことを続けていたのでは、失敗する運命にある」(同書)の言葉通りになっています。現場に責任はないのです。

本記事は、月刊『理念と経営』2020年11月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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