企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

「魅力ある現場」をつくれば人は必ず、集まってくる

事業承継には、業種により経営感覚と併せて現場体験も要ります。小正醸造の小正芳嗣社長は醸造学修士の強みがありますが、それを支える現場力も不可欠です。

でけへん思うたら何もでけへん

 社長力や管理力でも紹介した小正醸造株式会社は、時代の流れとともに、いろいろな苦境を体験しています。現小正芳嗣社長が入社した頃は、決してキャッシュフローが潤沢ではありませんでした。しかし、現会長が教育投資を厭わなかったことが成功の最大要因です。
 私が芳嗣社長と出会ったのは、福岡で行われていた可能思考教育で、私が講師を務める。3日間の「SA自己成長コース」の折でした。受講生が大勢のなかで、彼は目立っていました。大学時代にラグビーをやっており、親の苦労も全く知らずに青春真っ盛りの大学生活で、心身共に鍛えていたのです。
 私は講義していたときに、「小正君、君は来年1月からの起業家養成スクールに参加しなさい。ラグビーの試合は負けても次に勝つことはできるが、企業は一度で破綻する場合がある。社員さんも家族もどん底の悲劇を味わう。いまから、スケジュール調整しなさい」と彼に言いました。
 芳嗣さんはおそらく意味も分からないまま、多分、体育会のノリでしょう、「ハイ、参加します!」と答えたことを思い出します。ご一緒だった芳史社長は苦笑いしておられました。しかし、いかに企業経営の知識不足が不幸を招くかを体験されていただけに、その日の夜にスケジュールが決まりました。
 同社の財務内容は私も把握していましたが、松下幸之助翁の「でけへん思うたら何もでけへん」の講義でしたから、お二人とも納得されたのでしょう。ここから、日本発のウイスキー工場、嘉之助蒸溜所の新設に成功していったのです。

事業を永続させる鍵は現場力が握っている

芳嗣社長の新事業成功には現場力が不可欠でした。消費者のニーズの変化や自社離れの原因、離職者が多い現場の情報、企業そのもののイノベーションにおける改善提案などは、現場力が最も試されるものです。
 その一人に、2005(平成17)年に入社して以来、現場で努力し、かつ新事業のウイスキー蒸溜所づくりに貢献した枇榔誠さんがいます。彼は新規市場開拓がなかなかうまくいかないなか、働く人々を守るために努力する事業承継者・芳嗣専務の必死な姿に、自分たちも負けてはいけない、と共感したのです。枇榔さんは自分の実力を高めることことがその会社の現場力を高め、チームやお客様に貢献し、それが自社への貢献となって、働く喜びが生まれることを理解していました。彼は研究畑を歩んできましたが、焼酎ブームの時も、そのブームが下がったときでも、自分のことのように悩んだといいます。そういう悲喜こもごもの体験が自分を強くし、仕事力を高め創造性を生み出していくのです。
 また後継者である芳嗣専務の構想を実現させるため、さまざまな形でアドバイスし、一緒に何度もスコットランドへ行って、嘉之助蒸溜所設立に貢献しています。入社14年になりますが、身を捨てて貢献した37歳のいま、研究開発課長兼嘉之助蒸溜所所長になっているのです。
 また、大牟田和弘さんはまだ33歳ですが、入社以来の活躍が認められ製造係長に抜擢されました。焼酎蔵の杜氏にもなり、現場力の強化に貢献しています。事業を永続させるには社長力・管理力だけではなく、現場力が大きな鍵を握っているのです。
事業承継者不足が25年の日本最大の問題です。昨年の大企業は好調で、税収は60兆円ともいわれますが、中小企業はまだまだです。そうか、現場の方々は6年後に127万社の企業が消える可能性もあることを知って、承継者支援に回ってください。

本記事は、月刊『理念と経営』2019年9月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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