企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論

あなたは「利益社会」、それとも「共同体社会」を選びますか

元号が変わります。「日本国憲法の下で象徴と位置付けられた天皇の望ましい在り方を求めながらその務とめを行い、今日までを過ごしてきました」と、今上天皇は述べられました。すべての人々が任務を果たしてこそ、善き日本になるのです。善き日本は現場がつくってきたのです。

グローバル化の中で通用しなくなってきた共同体

ドイツの社会学者で、社会進化論を提唱したフェルディナント・テンニースは、共同体社会のゲマインシャフトが近代化していく中で、利益や機能を中心とした社会のゲゼルシャフトへ変容していく、と説きました。

共同体として自然発生的に血縁や地縁を中心として完成されていったゲマインシャフトは、人間関係やお互いの情念を大切にしました。そして、個人は組織に対する貢献意欲が求められ、組織は所属員を全員で守ってきたのです。

この2月に亡くなられた堺屋太一先生は、『組織の盛衰』で、利益中心の機能体組織は、人間の気持ちや相互補助を大事にする共同体組織の良い所を取り入れて、より良き組織の進化を求めることを勧めています。日本の年功序列的な賃金体系は、社会形態の名残として色濃く残っています。

しかし、共同体として残ってきたものが、グローバル化の中で徐々に通用しなくなっています。「機能体組織」とも訳されるゲゼルシャフトは、利益のための機能と効率が厳しく追求されます。有能な人間は自律して富貴を得て、組織に依存的だった人は、あらゆる面で試練を味わいます。

私は急激な利益社会変化を好みません。生産性改革ならともかく、「働き方改革」という名称にアレルギーさえ感じます。個々人が自由に働いて能力を伸ばし、自由に稼ぐことに制限を加えることに疑問を強く感じるからです。

利益社会の「在るべき企業」の姿を、われわれは求めてきた

現在は、コミュニティーに価値を置くコミュニタリアン(共同体主義者)と、自由に能力を発揮することに価値を置くリバタリアン(自由主義者)のせめぎ合いの時代です。コミュニタリアンは共同体維持に価値を置く、法律よりも道徳や倫理を優先し、「仁・義・礼・知・信」を一つの掟と位置づけます。リバタリアンは、法律に違反さえしなければ、能力を中心にして道義よりも利益や自由を追求します。そうした時代認識を明確に持つことが大事なのです。

ただ、何事にも長所短所があり、TPOが求められます。私は長年「個人と組織」を研究してきましたが、可能思考教育やコミュニケーション教育では「コミュニタリアリズムと利益社会の統合」を目指しています。孔子もコミュニタリアンです。人間にとっての理想国家を追求しました。

しかし、日創研の教育体系にある職能教育は、来るべき利益社会での「在るべき企業」の姿を追い求めてきました。そして、結論が渋沢栄一翁の「論語と算盤」であり、二宮尊徳翁の「道徳と経済」です。松下幸之助翁は「共存共栄」「適正な競争」の両面を述べています。

本記事は、月刊『理念と経営』2019年4月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。

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