企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論
社長力
2025年12月号
逆境を善用する気構えを持て

時代は大きく変化しています。しかし、備えあれば憂いなしです。佐藤一斎の説く「順境に居る者は、宜しく逆境を忘れざるべし」の心構えが必要です。社長力とは順逆に左右されない力のことです。この時代には特に必要です。
世の中に順境や逆境はない
成功している人は、決まって大きな逆境や試練を乗り越えています。さらに成長・発展している人は決まって逆境を善用しています。順逆は世の習いであり、たとえの言葉は違っても古典にはしきりに「順逆の法則」が述べられています。
アメリカの哲学者、ラルフ・エマーソンは、「与えた分だけしか受け取れない」という天の理法を述べています。これを私なりに解釈すれば、「会社が利益を上げている時は、負債を積みあげている時」です。日本の国力は四〇年周期で浮沈を繰り返すという「四〇年説」をお聞きしたのは、経営コンサルタントとして一番尊敬する田辺昇一先生からでした。
日本は明治時代、富国政策のもと近代化を成し遂げ、日露戦争で善戦しました。にもかかわらず、昭和恐慌を含めて、太平洋戦争で敗北しました。つまり、エマーソン流に皮肉を込めて言えば、明治に築いた資産のツケをきっちり支払わされたのです。ロシアの南下政策に端を発していたとはいえ、民間を含め三一〇万人に及ぶ犠牲者が出ていることは、指導者の順境への「驕り」だと思います。得意になることへの戒めが不足していたのです。今の日本の緩さと同じです。
しかし、日本は敗戦という負債、逆境を善用し、勤勉・努力の国として再び一から立ち上がります。「安かろう悪かろう」といわれながら技術革新を果たしました。その結果、貿易立国として、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」とまでいわれるようになりました。日本はグローバル市場で一人勝ちしたのです。
ところが、アメリカ経済を救済するために先進国が協調してドル高是正を決めた「プラザ合意」から急速に円高不況が始まります。輸出産業は大打撃を受け、特に製造業は塗炭の苦しみを味わいます。その打開策として日銀は一九八七(昭和62)年に政策金利を二・五%に引き下げました。
低金利に加え企業や個人は融資を受けやすくなり、銀行や企業や個人は本業よりも投機的投資に走りました。「バブル経済」の始まりです。
佐藤一斎の「天下の事固より順逆無く、我が心に順逆有り」(世の中の事は元来、順・逆のあるはずがなく、自分の心に順・逆があるのだ)の言葉そのままです(『言志四録』)。本来の政策の目的を理解せず、濡れ手で粟をつかむような風潮を一部の社長も信じ、日銀は一九九〇年初めに急激な金融引き締め策を取りました。バブルに乗った社長はあっけなく「バブル崩壊」で莫大な損失を抱え、自ら破綻する企業が続出しました。
幸之助翁の言葉を糧にした企業家たち
自民党総裁選で高市早苗氏が選ばれました。松下政経塾から二人目の自民党総裁です。さすがに尊敬する人は「松下幸之助翁」です。翁が私財を投じて創立しただけに、経営の神様といわれた幸之助翁が、どのような危機感から政経塾を創立されたのか、新総裁には、その志に報いてほしいと思います。
戦後の貧しい日本で、必死に働き、さまざまな逆境にもめげずに多くの人たちが起業できたのは、幸之助翁の著書や、言葉、講演を聞いて、逆境を恨むことなく善用した結果です。
アメリカ、韓国と比較して、日本の一人あたり年間労働時間を調査して、昨今の「長時間労働の是正」は適正だったのかを確認していただきたい。「働くことは悪いこと」という風潮も見られますが、「柔軟な働き方」は当然必要です。
幸い、議員の前で「全員に馬車馬のように働いてもらう。私自身もワーク・ライフ・バランスという言葉を捨てます。……働いて、働いて、働いてまいります」と宣言されました。
多くの社長が尊敬する幸之助翁は、「赤字は罪悪」と述べています。この言葉で多くの社長は企業経営に目覚め、さらなる努力に励みました。
本記事は、月刊『理念と経営』2025年12月号「企業の成功法則 社長力・管理力・現場力 三位一体論」から抜粋したものです。
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